父親は、あたりが柔らかくなって、雰囲気が変わった感じがした。この年代の親世代は、なかなか価値観が変わらない。間野さんは、「正月のケンカがきっかけで、本来の父に戻ったのではないか」と言う。

「実は、正月に郵便局の話を蒸し返したのは初めてで、16年間言えなかったんです」

 こうして和解して以降、父は軍隊経験など昔の話をするようになった。石巻に米軍が上陸するかもしれないからと、父が石巻の海岸に穴を掘って、爆弾を抱えて待ち伏せをする“人間地雷”の役割になっていたという話も、間野さんは初めて打ち明けられた。

「なんで今まで黙ってたんだよ」と思った。そんな父との和解をきっかけに、兄に対する見方が180度変わった。

重荷で、負い目で、恥だった
兄と30年ぶりの会話

 間野さんにとって、これまで兄の存在が重荷だったし、負い目だったし、恥だった。最終的に兄を背負うのは、自分だろうと直感した。

「付き合った女性からも何回か『お兄さん、どうするの?』と言われました。独立したら、自分で家族を持ちたいというのもありました」

 独立してからは、金で解決しようと思っていた。かつて利用者を死なせて刑事事件になった自立支援団体に相談したこともある。

「これまで兄に問題があると思っていましたが、“意味の転換”をしたことによって、『兄に問題はない』『その外側に問題がある』と考えられるように変わったのです」

 以来、間野さんは、近所の住民と仲良くできるようになった。近所に情報を共有することによって、間野さん自身、後ろめたい気持ちが消え、実家に帰りやすくなったという。