予算の減額といっても
本質は税金の付け替え

 これまで、障害者雇用促進法(旧身体障害者雇用促進法)の規定に則り、企業に対して障害者雇用を押し付けてきた格好の国(厚労省を含む)だったが、今では産業界における求心力を失いつつある。

 18年8月に発覚した障害者雇用の水増し問題では、国の28の行政機関で約3900人、地方自治体などでは約3800人、合計で約7700人の水増しがあった事実が判明した(17年6月時点)。これまで、数字ありきで企業に厳しく科してきた法定雇用率は、国・地方自治体などは民間企業より高い2.5%だったが、再調査で実際は半分以下の1.17%だったことが露呈する。

 企業は、障害者雇用率の達成を実現するために、人員やコストをかけて本業には直結しない仕事を捻出するなどして、“数字合わせ”にあくせくしてきた。その裏では、世間に模範を示すべき立場の中央省庁が、前提となるデータの数値を操作するなどしていたのだ。

 実は、法定雇用率の算出の根拠については、ざっくりした算定式が公開されている。だが、詳細な内訳は明かされず、今もブラックボックスのままだ。加えて、法令の無視は、旧法が定められた60年(59年前!)に遡る疑いが濃厚となってきた。もはや、何を言っても、国民の信頼は取り戻せまい。

 現在、国は前例なき約4000人というスケールで国家公務員の採用を進めている。その大半は、すでに民間企業で働いている障害者の中途採用で補填する。国は、自らの不始末に対し、過去には本腰を入れてこなかった障害者雇用を急拡大させたことにより、民間企業の採用計画に影響を及ぼすという矛盾を引き起こしているのだ。

 企業で働いた経験のある障害者にとっては、今回の大規模採用は唐突な話だが、より安定した国家公務員という立場に魅力を感じて転職を考えても、不思議ではない。向こう2年間で、約8000人を新規採用する以上、しばらく雇用市場の混乱は避けられそうにない。

 冒頭で触れたように、国は中央省庁などにも、民間企業と同様の罰則を科すことにした。法定雇用率を達成できない場合には、1人に付き60万円というペナルティを設ける。だが、予算の執行には影響しない「庁費」の枠から、翌年度の雑費を削ることで代替する。

 このペナルティの原資は、あろうことか税金なのである。仮に、ある省庁で、「障害者の採用人数が10人足りない」という場合には、600万円の罰則(予算の減額)となる。だが、その省庁へ渡る税金の額が減っても、削減分は国庫に収まるというスキームなのだ。

 本質的には、行政機関内部での“付け替え”に過ぎず、当該省庁の懐が痛むこともない。こうした急ごしらえの弥縫策で、納税者の理解が得られるものだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)