「レーザービーム」など
イチローによって広まった言葉も

 イチローは野球の表現にも影響を与えた。そのひとつが「レーザービーム」だ。実はイチローがメジャーのファンに最初に認知されたのは打撃ではなく好守備によってだった。2001年にマリナーズに入団したイチローは開幕直後のアスレチックス戦の1死1塁の場面でライト前のヒットを捕球、3塁へ走った走者を矢のような送球で刺した。試合を実況していたアナウンサーはこの送球に度肝を抜かれたようでレーザービームと表現。それが全米のファンに伝わり、イチローの凄さが認知されたのだ。

 最近ではソフトバンクの甲斐拓也捕手の送球の正確さや速さ、盗塁阻止率の高さが注目され、キャノン砲のようだということで「甲斐キャノン」と呼ばれているが、プレーの凄さをイメージできるものに例えて表現するようになったのはイチローのレーザービームの影響といえる。

 また、1試合で複数安打を打つことを「マルチヒット」と呼ぶようになったのもイチロー効果だろう。それまで日本球界では複数安打を表わす明確な用語はなかった。「固め打ち」か3安打以上打った場合の「猛打賞」くらいしかなかったわけだ。だが、イチローがヒットを積み重ねていることが注目され、マルチヒットという言葉が伝えられ使われるようになった。ちなみにイチローのマルチヒットの試合数は907でメジャー歴代11位にランクされている。

 このようにイチローはファンに野球を観るうえでの楽しみやライフスタイル、プレーの表現などにおいても影響を与えてきた。大げさかもしれないが、日本のスポーツ文化にも貢献したともいえるのだ。

(スポーツライター 相沢光一)