3段階降格

「昨日、ロバートと会った」

「あなたのアメリカのお友達ね。私も知ってた方がいいことを話してたんじゃないの」

　たしかにその通りだ。経済の知識は彼女の方が森嶋より遥かに多い。

　森嶋は優美子にロバートに連れられて、インターナショナル・リンクのＣＥＯビクター・ダラスと会ったことを話した。ただし、話しすぎないように、最大の注意を払いながらだ。村津とのことは黙っていたほうがいいだろう。いずればれれば、その時のことだ。

　そして迷ったが、ジョン・ハンターの動向についても言った。

「すでにユニバーサル・ファンドが動いてる。ジョン・ハンターだけじゃなく、最高戦略責任者アルバート・ロッジも日本に来ている」

「そんな話、初耳だわ。少なくとも私にとっては」

「財務省は何も知らないのか」

「それって、金融庁の管轄じゃないの。でも、何かあれば必ず財務省にも情報は上がってくるはずよね」

　優美子は考え込んでいる。

「昨日のインターナショナル・リンクの日本と日本国債の3ランク降格は知ってるわよね。総理が民間の調査会社の評価など意に介さないと切って捨てた発表も。そのために為替は3円以上の円安、日経平均は200円以上の安値となっている。そんな国の国債をどうしようっていうの。空売りしても大して利益は出ないわよ。むしろ、損失が出る可能性が高い。それとも彼ら、何か新しい情報をつかんだの」

「そんな話は聞いていない」

「やはり地震が与えたショックかしら」

「ロバートは、地震がユニバーサル・ファンドの円の空売りとＣＤＳ買いを防いだとも言っていた。しかし、金融機関が正常に戻り次第、攻撃を開始するそうだ」

　森嶋はあえてロバートが言った攻撃と言う言葉を使った。