条項の緩和を訴えるも――

  JDIはこれまでなんとか返済はこなしてはきたが、今後は予断を許さなくなってきた。今年に入ってアップルは「iPhoneXR」の液晶の注文を絞り始めている。これにより、JDIの現預金残高はたちまち危険信号が灯っている。

 昨年12月末の現預金残高は544億円。関係者によると、今年2月は条項が定めた300億円の基準すれすれで推移した。今後、この条項に抵触すれば、アップルはJDIに1000億円の即時全額返済を求める権利がただちに発生する。

 中台連合はこの条項に対し大いに不満を抱く。JDIに600億円を注入したとしても、アップル自身が注文を絞りさえすれば、JDIの現預金残高がトリガー条項に抵触し、アップル側に600億円の全額が流れていくことになるからだ。仮に1000億円の一括返済を免れたとしても、条項の縛りによって年間200億~300億円が自動的にアップル側に流れていく仕組みが続く。

 中台連合の内部では「アップルへの返済条件の緩和をJDIへの資金注入の条件にすべき」との声が高まっている。INCJの志賀会長と経済産業省幹部の2人が年度末を控えたぎりぎりのタイミングでアップル本社へ乗り込んだのは、こうした中台連合の要求に基づいて、19年以降の返済減額を訴えるためだった。

 だが、翌23日にアップルから返ってきたのは、事実上のゼロ回答。中台連合側の要求は全面的に無視された。引き続き中台連合は、アップルに譲歩を求めていく考えだ。

 そんな中で26日、JDIは東入来信博会長兼最高経営責任者(CEO)が緊急入院したことを発表。関係者によると、東入来会長は3月初旬、来日したアップルの調達担当者、中台連合の代表者、INCJの勝又幹英社長の4者会談を主催して利害調整に追われた。過労に倒れたのはその直後だった。

 中台連合との交渉役は月崎義幸社長に引き継がれ、アップルとの“不平等条約”に火種を抱えたまま3月期末を迎える。出資交渉の先行きは一段と不透明になっている。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)