M課長 「来期は昇格を視野に、頑張ってみてはどうだろうかと思っていてね」
Aさん 「昇格ですか?」
M課長 「時代の流れもあって、女性が管理職を目指すチャンスだと思うけど」
Aさん 「…。管理職は目指していないです」
M課長 「え?だってAさんは仕事熱心だし、なによりも報酬が上がるよ」
Aさん 「…。報酬は今のままで十分満足しています」

 M課長は、Aさんの仕事ぶりを高く評価しており、管理職になるための評価ポイントをアドバイスしたつもりでした。しかしAさんは、「仕事に熱心に向き合う=管理職を目指している」とは考えていなかったのです。

 にもかかわらず、誰もが管理職を目指しているのだろうとM課長の価値観を押しつけられ、モチベーションが下がってしまいました。

 思わぬ展開になり、M課長は「Aさんのためを思ってベストな方法を伝えたつもりだったのに…」と困惑してしまいました。

共感的に理解することが
解決への道

 私たち産業カウンセラーは、カウンセリングの専門家であっても、人生の専門家ではありません。だから、カウンセラーがどんなに人生経験が豊富であっても、自身の価値観を押しつけてしまっては相談者は納得してくれません。

 そこで、重要なのは、「共感的理解」の姿勢です。共感的理解とは、相談者の考え方や感じ方を理解することです。

 今回の事例の場合、M課長はAさんが感じていることや考え方について一切触れていません。むしろ、M課長自身の考え方や経験に基づいて、話を展開してしまっています。