もちろん「飛び散る」という大きなデメリットを抱えるのが立ちスタイルだが、飛び散りが問題視されるようになったのはここ十数年くらいのことで、物心がついた時から立ちスタイルを貫いてきた男性には「今さら座ってするなんてなんだかなあ」という思いがあり、デメリットには意図的に目をつぶりたくなるようである。

 話がややそれてしまったが、男性用の公衆トイレにほぼ確実に設置されている小用便器には、立ちスタイルに付きまとう唯一にして最大のデメリット「飛び散り」が解消されてほぼメリットしかない。便器の両サイドが壁となって手前にせり出してきているので飛沫の飛散がある程度防がれるし、最悪飛散したとしても清掃員のどなたかがキレイにしてくれるはずなので後のことを憂慮する必要がないのである。

 かくして男性に大人気である小用便器だが、筆者は不思議なことに気がついた。使用中、うつむいて便器内に唾を垂らす人が意外に多いのである。実は筆者もこの癖があり、理由は定かではないのだがなんとなくやってしまう。路上に唾を吐く習慣はまったくないにもかかわらず、である。

 はたして何割の人にこの癖が認められるのか、そして推測される「そうしてしまう理由」とはなんなのか。周辺調査、および実地調査を試みることにした。

偶然の気づき
世紀の大発見か

 そもそも私が自分のこの癖に気づいたのは、ある駅のトイレで小用を足していると他の人が同様のことをやっているのを視界の端で捉えたのがきっかけであった。

「他の人も同じことをするんだ」と意外に思い、それとなく観察していると別の利用者たちが続々と同じことをしていく。これは大いなる発見ではないか。私は興奮した。

 二十歳の頃、尿を我慢しすぎて尿道炎を患って以来極端にキレが悪くなっている筆者の小用は、全行程を終えるまでに要する時間が常人の約3.5倍に達している。すなわち公衆トイレにおいて、小用便器に向かって構えて微動だにしなくなる筆者の両隣では3~4人の利用者が訪れては用を終えて去っていく。

 日ごろはこの壊れた蛇口たる己が尿道を恨めしく思っていたが、今回他人の小用の様子を観測するのに最適であると気づき、初めて感謝するに至った。何しろ1回小用をするだけで6~8人分のデータを収集することができるのである。