2019年4月に罰則つき残業規制がスタートして、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。
「感謝」を伝え合う機会を増やす
現在、多くの会社で「働き方改革」が進められています。それ自体は素晴らしいことなのですが、少し懸念していることもあります。というのは、残業を減らすために一定時刻に消灯したり、社屋から退去させようとする企業も散見されるからです。
しかし、こうした社員の自発性・主体性に基づかない「働き方改革」は長続きしません。むしろ、社内をギスギスとした雰囲気にして、生産性を落とす結果を招きがちです。それよりも重要なのは、本連載でも繰り返しお伝えしてきたように、社内・職場の「関係の質」を高めることなのです(連載第8回)。
お互いの意見を遠慮なく出し合うことによって「集合知」を生み出すためにも、お互いに協力し合って業務を効率的に処理するためにも、毎朝出社するのが楽しみになるような「関係の質」を築き上げることが最も重要なのです。
そして、「関係の質」の高い職場には、自然とメンバーの「自発性」「主体性」が育まれます。この「自発性」「主体性」こそが、継続的に「働き方改革」を進めていく最大のエンジンとなるのです。
とはいえ、気恥ずかしさもあって、お互いの距離を縮めるのに苦労するチームが多いのも事実です。実際、私たちがコンサルティングした多くのチームで、「コミュニケーションの活性化」が課題に上がるケースが多いと実感しています。
そこで、チームの「関係の質」を高めるために、おすすすめしているツールを2つご紹介します。「サンキューカード」と「功労賞」です。
まず、「サンキューカード」は、その名のとおり、誰かに「感謝の気持ち」を伝えたいと思ったときに、気軽に書き込めるカードです(下図)。このカードを本人に直接手渡したり、専用ボードに貼りつけたりして、お互いに「感謝の気持ち」を伝え合うのです。
しかし、マネジャーがメンバーに「みんなでどんどんサンキューカードを交換し合いましょう」と呼びかけるだけでは、なかなか実行してくれるメンバーはあらわれません。そこで、会議の場で5分間だけ、メンバー全員で一斉に記入して交換する機会を設けるのです。
これが実に効果的です。ひとりでやろうとすると恥ずかしさを感じますが、全員でやるとなるとそれほど恥ずかしくないからです。このような機会をうまく活用して、マネジャーが率先して「サンキューカード」をメンバーに贈れば、徐々にメンバーの抵抗感も薄まっていくはずです。
私たちの会社では、マネジャーが毎月、会議で全員の書いた「サンキューカード」を代読してメンバーに手渡すようにしています。他のメンバーが誰にどんな「サンキューカード」を贈ったかを知ることで、毎回「あの人は、そんな仕事も頑張っていたのか。知らなかった!」といった新たな発見があります。
その結果、メンバーたちは「頑張れば、それを誰かが見てくれているかもしれない」という前向きな気持ちをもつことができるようになります。そして、どんなに小さな仕事でもモチベーション高く取り組むようになるのです。