テレビを見る高齢者
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 いま現在のテレビ視聴時間が、6年後の記憶力に影響するようだ。英国からの報告。

 長時間の「座りっぱなし」が重大な病気の発症リスクであるとの指摘が相次いでいる。しかし、座っている間に何をしているかという切り口の検討は少なかった。

 英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者らがこの点に注目。2002年から始まった50歳以上の男女を対象としたパネル調査「ELSA」から3662人分のデータを抽出。08~09年のテレビ視聴時間と6年後の記憶力との関係を調べた。解析対象者の平均年齢は67.1歳、男性が43.7%で、7割以上が既婚者だった。

 テレビ視聴時間は(1)1日2.5時間未満が19.6%、(2)2.5~3.5時間が19.1%、(3)3.5~4.5時間が18.4%、(4)4.5~7時間が23.4%、そして(5)7時間以上が19.6%だった。

 また、対象者の背景をみると、未婚者、無職、低所得者層で視聴時間が長く、男性よりも女性の視聴時間が長い傾向が認められた。

 対象者は登録時と6年後に10個の単語を記憶し、他の課題に取り組んだ後にできるだけ思い出す「言葉の記憶力」テスト、1分間にできるだけ動物の名前をあげる「意味流ちょう性」テストを受検。身体の健康や座位時間などの影響を調整して、テスト結果とテレビ視聴時間との関係を解析した。

 その結果、1日3.5時間以上のテレビ視聴で、言葉の記憶力が明らかに低下することが示された。一方、意味流ちょう性への影響は認められなかった。

 研究者は「テレビは受け身のメディアであり、長時間のテレビ視聴によって読書など能動的に脳を使う時間が減るのでは」と考察。

「その他の電子媒体であるビデオゲームやインターネットは、それほど一方通行ではないので認知機能には有用だろう」としている。

 さて、高齢者はどうしても一人でテレビを視る時間が長くなる。同じ視るなら家族や友人と一緒に視聴し、あれこれ会話をするきっかけにしてほしい。認知機能の維持には「入力」と「出力」のバランスが必要なのだから。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)