しかも清田氏を巡っては、昨秋から本格化した総合取引所の協議の真っ只中である11月、上場インフラファンドの取引でJPXの内規に違反していた事実が発覚。「証券界のキャリアが長く、まして資本市場の要となるべき取引所トップとしてあるまじき行為」(証券会社社員)といった批判が渦巻いた。これにはJPXの監督官庁である金融庁も怒り心頭にもかかわらず、清田氏は進退問題をうやむやにしてトップに居座り続けている。のみならず、業界で悪評高い濵田氏へのポストの処遇を取引材料に自身のレガシーを実現すべく、日本の商品市場を“ディール”の材料へと貶めてしまった。

 今回、総合取引所構想が昨秋から一気に動き出した背景には、安倍首相の諮問機関である規制改革推進会議で「緊急に取り組む」との方針が示されるといった“外圧”の影響も少なくないが、そんな状況に乗じ当事者間の取引材料へ貶められてしまった側面は否めない。清田氏は28日の記者会見でも、質疑応答への返答で開口一番、今回の統合協議について「濵田社長のリーダーシップや関係省庁等のご理解をいただいて基本合意を結べたことを大変うれしく思っている」と持ち上げた。

低落するニッポンの商品市場
安全保障面で重要との指摘も

 総合取引所を巡ってはこれまでも多様なステークホルダー(利害関係者)の思惑が絡み合い、長年にわたり遅々として交渉が進んでこなかった(詳細は週刊ダイヤモンド2018年12月1日号・第2特集「動き出した『総合取引所』構想」参照)。そんな姿が今回の統合過程でも露呈し、本丸であるはずの商品市場の活性化に向けた議論は「未だほとんどなされていないのが実情」(業界関係者)というわけだ。処遇や実績を巡るディールを結び合う一方で置き去りにされたのは、本来最も重視すべき市場活性化への議論だ。

 国内商品市場の低落ぶりは目を覆うばかり。商品先物市場の出来高は04~17年の間に世界全体の出来高が約8倍となる一方、国内市場は約6分の1に急減するなどもはや風前の灯火だ。そんな商品市場がそもそも、なぜ重要かといえば、価格発見機能といった市場本来の役割もさることながら、国の安全保障にも通じることがある。一国の市場インフラを担う取引所は公共性が高く、一般的な民間企業とは性質が異なる点は否定できない。

 日本ではあまり知られていないが、欧米ではこのところ国際情勢を語る際、地政学(Geopolitics)から派生した「地経学(Geo-economics、ジオエコノミクス)」という考え方を用いる場面が増えており、ダボス会議でも専門家グループがつくられている。このコンセプトを広げた代表的な近著が『War by Other Means』(2016年、邦訳未完)。本書によると、地経学とは「地政学的な目的のために経済的な手段を使うこと」で、貿易制裁などを巡って応酬を繰り広げる米国と中国の経済摩擦は直近の典型例だ。

 このコンセプトに立った時、コモディティー関連で日本の記憶によぎるのは、2010年ごろに尖閣諸島を巡って衝突した際、中国が日本へレアアース禁輸の措置を講じたこと。当時はこれを受けてレアアース価格が急騰、産業界に大混乱が生じた。その中国がここにきて、世界の国際商品市場で急速に存在感を高めている。かつて東商取の売買が盛んだった頃は、東京のゴム先物相場が国際的な「価格指標」とみなされていたが、今や売買高が大きくなった上海ゴム先物にその地位を奪われてしまった。