一度忘れた後のほうが
効果的にインプットできる

 実験以後、この現象は、心理学の分野で「バラード=ウィリアムズ現象」と呼ばれています。

 私は、この現象を不思議だとは思いません。

 たとえ授業の直後に復習しても、それは授業を延長させたようなもの。1回だけインプットしたのとさして変わりません。たとえてみれば、水がいっぱいに入ったコップに、さらに水を足してもこぼれるだけなのです。

 忘れないうちに、また覚えてもそれほど効果がありません。

 ところが、翌日に復習した場合は、その時点でかなりの部分を忘れているはずです。そこでタイミングよくもう一度思い起こすわけですから、こちらは2回インプットしたことになります。つまり、コップの水がだいぶ蒸発して減ったところで、また水を注ぐのですから効率的に、再びコップいっぱいの水になるわけです。

 つまり、忘れてしまったことを、効率的にインプットできるのです。

 最初に述べた「人間は、忘れるから覚える」とは、まさにこのこと。

 実際に、私が勉強するときも、復習は2日後にするようにしています。というのも、意味のある内容を覚えるときに、「バラード=ウィリアムズ現象」の効果が最大になるのは2~3日後であると言われているからです。

 2~3日も経つと忘れていることも多々あって、「ああ、そうだった!」と思い出すこともしばしば。この「そうだった!」が重要なポイントです。

「そうだった!」と思い出すたびに、記憶に定着しているんだなと実感できるようになります。

「年をとると、覚えたことをすぐに忘れる」と嘆く必要はありません。「忘れるから覚えるのだ」と発想を転換しましょう。

 一番大切なのは、「忘れたら、また覚える」を繰り返すことなのです。