持続可能な社会と製品を

 ジョブズ時代のアップルは、地球環境問題には後ろ向きだった。2006年の株主総会で「環境対策が不十分だ」とジョブズは批判された。その前年は、リサイクル活動が消極的だと抗議デモまで本社近くで起きていた。

 しかし、クックがCEOになってアップルは劇的に方向転換した。再生可能エネルギーだけでアップルは世界中の全ての自社設備を100%賄っている。さらに、取引先サプライヤーにも再生可能エネルギーの利用を推し進め、資金提供もしている。再エネでの取り組みをここまで徹底している日本企業は残念ながら見当たらない。

 そして、クックが目指しているゴールは「製品の完全リサイクル化」だ。iPhoneなどで使う部品材料の金属やレアメタルなどは「採掘」から「加工」、「組立・完成」そして、「ユーザーによる使用」を経て「廃棄」までの一直線になっていた。

 アップルはそれをガラッと変えて、「廃棄」されることなく製品が再び「加工」に戻って、「組立・完成」へとつながるクローズドな循環を実現しようと前代未聞の挑戦を始めている。実現すれば「採掘」も必要なくなる。 これは、究極の「クローズド型サプライチェーン」であり、「製品の完全リサイクル化」ということだ(図参照)。

 しかし、クローズド・ループによる製品の完全リサイクル化は簡単ではない。多くの専門家が「10年以上かかる」と予測しているほど困難な挑戦である。そんな困難にわざわざ挑戦する理由を、クックは「私たちの使命は常に、世界を前よりも良いものにして残していくことだ。将来の世代の運命は私たちにかかっている」と語っていた。

もしも、ジョブズが生きていたら…

 もしジョブズが生きていて、今でもアップルのCEOを務めていたら「アップルはもっとイノベーションを起こしていたのでは?」と予測する人は多いだろう。

 だが、権力者を嫌うジョブズなら、トランプ大統領にケンカを売ったのではないか。この大統領が最初に行ったのはシリアなどのイスラム圏の国からの入国を制限する措置であり、ジョブズの実父はシリア人だ。そして、監視社会を強化し、自由と民主主義を弾圧する中国の習近平主席とジョブズは対立しただろう。個人に力を与え、独裁者ビッグブラザーを打倒することがアップルの存在価値だったからだ。