民主党の強い要求に加え、世論調査でも「報告書を公開すべきだ」とした人が84%にのぼったことで(クイニピック大学、3月21日~25日)、バー氏は態度を軟化させ、400ページ近くの報告書を、機密情報や個人のプライバシーを不当に害する部分などを除いて4月半ばまでに公表すると発表した。

 報告書には特別検察官が集めた証拠や情報分析、結論に至った経緯などが記されているというが、今後はその内容をめぐって議会とトランプ大統領との間で激しい攻防が行われるだろう。

議会による疑惑の追及は激しくなる

 モラー特別検察官の捜査とは別に、議会下院の常任委員会(司法、情報、監視・政府改革など)はこれまでトランプ大統領の様々な疑惑を追及してきたが、今後は特別検察官の報告書で示された証拠や情報分析なども踏まえて調査を進めていくことになろう。つまり、この報告書を「ロードマップ」(目標達成の工程表)として使いながら、大統領に対する疑惑追及を強めていくということだ。

 特別検察官の捜査と議会の常任委員会の調査には1つ、決定的な違いがある。それは、前者は主に法律違反があったかどうかを基準にしているが、後者は違法性だけでなく、大統領の不正行為が米国の憲法や法の支配、民主主義などの脅威になっていないかという側面も重視していることだ。

 たとえば、トランプ大統領の疑惑追及の急先鋒とされる下院司法委員会は現在、司法妨害や権力乱用、汚職などを調査しているが、たとえ不正行為の違法性の程度は高くなかったとしても、憲法や法の支配、民主主義を脅かしている可能性があると判断すれば、厳しく追及していくということ。同委員会は大統領の弾劾を審議する役割も担っているので、その場合はトランプ大統領の弾劾を勧告するかもしれない。

 モラー特別検察官が「トランプ陣営とロシアとの共謀は確認できなかった」としたことで、民主党が弾劾手続きを始める可能性はかなり低くなった。しかし、司法妨害があったかどうかについては判断を議会に委ねたので、今後の調査次第では弾劾に進む可能性は残されている。

 下院司法委員会のジェラルド・ナドラー委員長は3月初め、ABCテレビの政治討論番組『ジス・ウィーク』で、「トランプ大統領の司法妨害はあったと思いますか?」と問われ、こう答えている。

「そう思います。大統領による司法妨害は明らかです。大統領はモラー特別検察官の捜査を“魔女狩りだ“と、1100回言いました。フリン元大統領補佐官をFBIの捜査から守ろうとし、ロシア疑惑捜査を阻止するため、コミー前FBI長官を解任したとNBCテレビに語っています。公然と証人を脅迫しているのです」

 ナドラー委員長は今後、特別検察官の報告書で示された証拠なども踏まえつつ、新たな関係者の証人喚問も含め、大統領の司法妨害や権力乱用などについて徹底的に調査していくだろう。