一万円札経済論壇で話題の「MMT」。実は我々の足元でも「日本版MMT」と呼べる状況が起きている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

議論を呼ぶ「MMT」
日本で実質的に行なわれている

 昨今、経済論壇でMMT(Modern Monetary Theory/現代金融理論)が話題となっている。MMTとは、自国通貨の発行権を持つ国では自国通貨建てで国家債務のデフォルト(債務不履行)が起こらず、政府は無限に信用を供与できるという主張である。

 これまで話題に上ることは少なかったが、政治経験がない元ウェイトレスの経歴を持ちながら、昨年の米下院議員選挙に史上最年少で当選した民主党のオカシオコルテス氏が、自身が推し進めるグリーンニューディール政策(環境・再生可能エネルギー関連の財政支出拡大)の財源としてMMTを提唱したことで注目を集めた。

 同氏は、ブログにて、「オリジナルのニューディール政策、第二次世界大戦、2008年の銀行救済、量的緩和、私たちの現在のすべての戦争と同じように、連邦準備制度理事会(FRB)は信用を供与することでグリーンニューディールの財源を手当てすることができる」と主張している。

 これに対し、ジェローム・パウエルFRB議長、黒田東彦・日本銀行総裁など主な各国中央銀行首脳らは「危険な考え方だ」と異を唱えており、欧州中央銀行(ECB)の次期総裁の有力候補であるフランソワ・ビルロワドガロー仏中銀総裁は「ハイパーインフレになる大きなリスクがある」とMMTを強く批判した。

 ただ、MMTのように、政府の債務を中央銀行が引き受けることによって財政政策を拡大させるという考えは決して突飛なものではなく、むしろオカシオコルテス氏の言うように、有史において幾度も用いられてきたオーソドックスな考え方だ。それどころか、この政策はすでに日本で行われているとも言える。