個人目標を設定しなかった「アップル」
個人目標だけを設定した「マイクロソフト」

 ここでは、目標管理をより戦略的に行う企業の例として、アップルとマイクロソフトを挙げて説明しましょう。

 アップルはiOSXというiPhoneなどに搭載されている新しいモバイルデバイス向けのOSを600人の開発者で2年間かけて開発しました。

 一方、マイクロソフトはWindows Vistaというパソコン向けOSを1万人の開発者で5年間かけて開発したといいます。単純な比較はできませんが、この2つのOS開発を比べると、やはり生産性の差を感じます。

 では、なぜこの違いが生まれたのでしょうか。

 実はアップルでは、この600人に対して2年間、個人の目標を設定しなかったといいます。iOSXを開発するというチームの目標だけを持たせて、全員で共通の目標を追いかけさせたというわけです。

 すると、全員が協力し合って、とにかくiOSXを開発することだけに向かって仕事し、自分の仕事が終わったら、他の人の仕事を手伝う様子が自然に発生するようになりました。

 一方、マイクロソフトでは、1万人が、通常通り個人の目標に沿って開発を進めました。すると、「自分の分は終わった」社員は、その他の人の担当分を手伝う流れにはならず、生産性はそれ以上高まらなかったのです。

 これは個人の能力による差ではありません。マイクロソフトの社員もやるべきミッションを行っています。また、アップルにおいても、評価制度を大きく変えたわけではありません。あくまで目標の持たせ方を変えただけです。しかし、それだけで社員の生産性は大きく変わってきます。

 アップルは、事業戦略を元に「この期間でこの製品を開発しなければならない。開発要員として最適な人材を選び、その人たちに一番活躍してもらうために、どのような評価制度をつくって、どう動かしていこうか」を考えて実行しました。事業計画に合わせて評価制度を少し変えるだけで、生産性を高め、事業推進に貢献できることを示す好例のように思います。

 このように評価制度は、工夫次第で戦略的に活用できる人事制度の1つですが、時代の変化によって、今までの評価制度のあり方が疑問視されている部分もあります。