なぜ、特許を無償化するのか?
それは、仲間を増やすため

 ここから、本稿の本題に移る。

 自動車メーカー各社が“大きな宿題”を抱える中、いくつかの自動車メーカーや部品メーカーなどから「トヨタのハイブリッド技術をぜひ使いたい」という打診がある、という。

 すでに、複数のメーカー(契約条項上、非公開)に対して、トヨタは特許実施権を有料(トヨタが言う適切な料金)で販売している。

 また、燃料電池車については2015年1月、米ラスベガスで開催されたITと家電の世界最大級見本市CESで、約5680件(当時)の特許実施権を無料提供すると発表している。

車両電動化技術に関して今回、約23740件の実施権を無料提供
車両電動化技術に関して今回、約2万3740件の実施権を無償提供 Photo by Kenji Momota
拡大画像表示

 こうした燃料電池での試みを、モーター、パワーコントロールユニット、充電器、エンジン・トランスアクスルシステムなど車両電動化技術の全体、約2万3740件の特許実施権の実施料金を無償化することで、トヨタのハイブリッド技術の仲間を増やすことができる。特許は20年間で切れるため、初代プリウス開発に関する特許等はすでに切れているが、その後もトヨタは各種の車両電動化技術の新しい特許を取得しており、また現時点で申請中の案件も含めて、各種特許が切れる時期はまちまちだ。

 今回の決定によって、特許実施権は無償となるが、特許を使う場合、またはトヨタから電動化関連機器を購入する場合、相手が技術的なサポートを必要とすれば、別途、技術コンサルティング料が発生する。これはトヨタにとって大きな利益につながる。これまで特許を有料販売してきた契約については、今後は無償化に変更されるためトヨタの収入は一時的に減るが、電動化関連機器の販売と技術コンサルティング事業全体としてみれば、将来的には収入は増える見込みだ。そうした事業の規模感として、寺師氏は仮に1社数百億単位ならば、全体でかなり大規模な事業に成長するはずとの見解を示した。

トヨタは今後、車両電動化技術のシステムサプライヤー(事実上のティア2)になると、トヨタが説明
トヨタは今後、車両電動化技術のシステムサプライヤー(事実上のティア2)になると、トヨタが説明 Photo by Kenji Momota
拡大画像表示

 これに伴い、社内体制も大きく変える。B2B(事業者間ビジネス)に対応するため、顧客1社あたり数十人単位でのサポート体制を敷き、全体として数百人単位の部署を新設するという。

 以前はトヨタ社内で行う電動化技術の開発は自社向けで手一杯であり、他社向けの対応に苦慮してきたが、今回の特許無償化を機に社内体制を刷新して新規顧客に対応する。先日発表された、トヨタの電子部品事業をトヨタの子会社であるデンソーに集約する件は、電動化事業の新戦略の一環だと、寺師氏は説明した。

 こうした電動化B2Bビジネスについて、寺師氏は「我々はティア2(二次下請け)になるということだ」とも言った。自動車メーカ―各社が契約するティア1(一次下請け)の大手部品メーカーに対して、トヨタが基本部品と技術提供を行う、という意味である。