結局、規制対応が最優先
EVシフトには生真面目な姿勢

 では、ここからは今回の意見交換を通じての私見を述べたい。

 このタイミングで、トヨタがハイブリッド技術を主体とする電動化のビジネスモデルを再構築するのは、自動車産業界全体の動きの中では“妥当”だろう。換言すれば、今がハイブリッド技術が高く売れる“ほぼピーク期”にあると思う。

 一方で、「トヨタは世界的に見ればEV事業で出遅れており、そうした遅れをハイブリッド技術の拡販で取り戻そうとしている」という類の報道をよく目にする。

 この点については、技術論を中心に論じると、これからの世界自動車市場全体の流れを見誤る危険性があると思う。なぜならば昨今のEVブームは、独フォルクスワーゲングループ (以下VW) が仕掛けたマーケティング戦略によるものだからだ。

 EVブームのきっかけは、2015年に起きたディーゼルエンジンの排気ガス不正問題だ。その際のマイナスイメージを一掃するため、VWは2019年からの中国NEV規制(2015年時点では2018年から実施予定だった)を睨み、電動化関連機器の大量発注を行うことで、EVブームを演出した。

 この流れに、ダイムラーとBMWが乗っかった格好だが、あくまでもEVシフトの主役はVWだ。フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、セアト、シュコダ、ランボルギーニ、ベントレーなどVWグループ全体で今後数年間にわたり多数のEVモデルが発売される計画だ。

 だが、こうした動きに対して、自動車用の大型リチウムイオン二次電池の製造メーカーなどでは「VW主導で本当にEV市場が急速に拡大するのか?」と懐疑的な意見を持つ人が少なくない。

トヨタが掲げる環境チャレンジ2050
トヨタが掲げる環境チャレンジ2050。EVや燃料電池車など電動車の普及の割合は「市場(お客様)が決める」と、寺師氏 Photo by Kenji Momota 拡大画像表示

 トヨタとしては、そうしたEVブームに躍らされることなく、各種の規制をしっかりとクリアすることを最優先していると思う。

 ただし、そうした姿勢が“生真面目過ぎる”と言われるのも致し方ない。寺師氏は、今後の電動車両の普及の動向について「市場(お客様)が決める」と繰り返した。

 トヨタはもう少し、電動車両の本格普及に関して“マーケティング戦略上手”になってもいいかもしれない。