まずは、世の中の人たちがサービスをどうとらえているのかを知るために、グーグルで検索してみると、

「相手のために気を配って尽くすこと」

「お客様に満足していただくために、自分の持てるものを活用して何かをして差し上げること」

 なるほど、自分の知識や技術を誰かのために提供することが、世間で考えられている「サービスの定義」のようです。

 しかし、この定義、単純すぎるのではないかと思います。

 私がこの疑問を持ったのは、鮨屋のおやじが不機嫌なのを目の当たりにしたからです。

「日本的サービス」とは真逆の
無愛想な鮨屋が大繁盛する不可解

「すきやばし次郎」という、ミシュランガイドが三つ星認定した銀座の高級鮨店をご存じでしょうか。「すきやばし次郎」は、1965年創業。高級鮨店といっても、かなり年季の入ったオフィスビルの地下にあります。店内は狭く、お手洗いはよそのお店と共用です。ハリウッドの大スターや、あのオバマ元アメリカ大統領もやってくる、世界に冠たるお店になったあとも、ずっとこの場所で営業されてきました。

 店の親方・小野二郎さんを追ったデヴィッド・ゲルブ監督のドキュメンタリー映画『二郎は鮨の夢を見る』に、そのサービスの様子が収められています。

 小野二郎さんは、まさに頑固一徹といった風情。お客さんの前でニコリともしません。「お前、誰や?」という心の声が聞こえてきそうな顔で出迎え、「おいしい」と褒められてもぶすっとしています。店の常連である料理研究家の山本益博さんは、「初めに(店に)行ったとき緊張していました。何年行っても緊張していました」と言います。高い代金を支払いながら、くつろげない店に通っているというのです。

 小野さんの態度は、「笑顔」や「思いやり」といったサービスに対する世間一般の認識とは真逆を行っています。にもかかわらず大繁盛です。

 これはおかしいんじゃないか?

 私が「サービスの定義」に疑問を持ったきっかけでした。