試合を重ねるごとに存在感を増している、FC東京のMF久保建英の周囲がにわかにかまびすしさを増している。6月に国際間移籍が可能な年齢である18歳になる状況を受けて、つい最近もスペインのスポーツ新聞がかつて下部組織チームに所属した名門FCバルセロナへの復帰が内定したと報じ、すぐさまFC東京側が事実無根と否定するひと幕もあった。世界も注目し始めているホープの現在地だけでなく、平成で刻まれてきた軌跡、そして令和で紡がれる未来を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
スペイン紙が「バルサ移籍」報道
久保建英の注目度は上昇中
ファンやサポーターだけでなく、Jリーグの試合にはさまざまな顔ぶれが観戦に訪れている。これから先に対戦するJクラブの関係者が先乗りの目的で視察することもあれば、補強に目を光らせる強化担当者も、あるいはクライアントとして契約している選手たちの活躍ぶりを見守る代理人もいる。
取材するメディアも含めて、ホームチームの広報スタッフに連絡を入れ、あるいは申請をしてスタジアムへ足を運ぶ。そして、開幕から5勝2分けと無敗をキープし、2位につけているFC東京の大金直樹代表取締役社長によれば、今シーズンの顔ぶれの中にちょっとした変化が生じているという。
「今までにないような海外のチームが、スカウティングで見に来ることがあります」
はるばる日本へ、それもFC東京のホーム、味の素スタジアムを訪れる目的は何なのか。お目当ての選手がいると見るのが自然だろう。そして、今シーズンのFC東京には映像だけでなく実際にその目でチェックしてみたくなるほど、まばゆい輝きを放っている選手がいる。
「例えばですけど、多分そこは(久保)建英を見に来ているのかな、と」
あくまでも私見で、想像の域も脱していない――こんな断りを入れたうえで、現役時代はFC東京の前身である東京ガスサッカー部でプレーしていた52歳の社長は、開幕から右MFのポジションを射止め、一戦ごとに右肩上がりで存在感を増している17歳の久保建英の名前を挙げた。