平成の金融危機からおよそ20年。国民生活の安寧さえ脅かす深刻な危機だったにもかかわらず、今では時間とともに人々の中で風化しつつあるのも事実だ。しかし、金融危機当時、日本銀行で幹部を務めていた和田哲郎氏によると、現在の日本でも「金融危機の芽」が確実にあるという。平成が終わりを迎える今だからこそ押さえておきたい2つの「金融危機の芽」の正体と、それを回避するための方策を和田氏が解説する。
前編はこちら→「平成金融危機で大手銀行が破綻した3つの理由、元日銀幹部が語る」
金融危機の芽(1)
海外経済・海外金融市場の不安定化
日本の金融システムは20年前に比べると、安定化しているように見える。
しかし、日本の金融環境が厳しさを増す一方、世界経済・金融市場(株式・為替市場等を含む)が一体化しており、そこで生じた問題が速やかに日本に伝播し、日本の問題と合体し、危機的状況に陥ることは十分ありうることである。
2008年9月に発生したリーマンショックは、米国での株安、ドル安が直ちに世界のマーケットに伝播した。日本もその煽りを受け、市況は(株、ドル等)暴落。そして景気、加えて地価は大きく下振れした(2009年は大幅なマイナス成長、下図参照)。
現在の世界経済は次第に不安感を増す方向にある。明らかに不確実性が高まっている。こうした時に重要なことは、的確な情勢判断と有事対応のシミュレーションである。また、仮に有事が発生した場合には、果断に行動することが肝要だ。
海外について具体的に見ていきたい。まず米国は、これまでは景気の腰がしっかりしており、米銀の収益も回復傾向にあるなど、相対的に安定していた。ただ、最近は景気の先行きに不透明感が台頭し、金融市場に不安定な動きが見られる。こうした動きは。、世界市場に飛び火するリスクがある。また、米中間等の貿易摩擦は報復を含め、貿易量を下押しし、世界経済にマイナスの影響を及ぼしている。保護貿易は1929年大恐慌の一因となっていただけに帰趨が注目される。