「わかったよ」

 D社労士が電話を切ろうとした時、B課長が待ったをかけた。

「D、今、時間あるか?相談に乗ってくれ」

 そしてAに関するこれまでの経緯と昨日の電話での会話内容等を説明すると、D社労士に助言を求めた。

「試用期間中だからといって、電話でいきなり『辞めます』は認められるのか?」
「試用期間中でも労働関係は成立しているから、従業員が退職する場合、就業規則で決められた期限か、期限がない時は、退職予定日の2週間前までの申し出が必要だ(注)
「そうだろう?ウチの会社は就業規則で退職予定日の1ヵ月前までに申し出るよう決まっている。だからAの即日退職は無効だ」
「しかしAさんは乙社に転職したのだから、会社にはもう戻ってこないと思うよ」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「ここは就業規則にこだわらずに、Aさんと穏便に合意退職をした方がいいよ」

注:民法第627条1項:当事者が雇用の期間を定めなかった時は、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

合意退職に納得しないB課長に
社労士が告げたこと

 B課長は憮然として言った。

「ウチの部署はほとんど残業がないし、Aには簡単な仕事をしてもらっていたのに何が不満だったんだ?それに退職するなら挨拶に来るべきだろう。それすらもなく合意退職なんて納得できない」

 D社労士は諭すように言った。

「Aさんが退職した原因は職場のコミュニケーション不足と、Aさんへの指導不足だよね。たとえ簡単な仕事しか与えていないとしても、新人には上司や先輩のフォローが必要なのに、それを怠った上司の君にも責任があるといえないか?」