権利拡大に反発する
「アンチLGBT活動家」の当事者

 ただ、セクシュアルマイノリティをめぐるさまざまな動きに対し、反発も強まっています。たとえば2018年7月、自由民主党の杉田水脈衆議院議員が、月刊誌『新潮45』に「LGBT支援の度が過ぎる」という文章を寄稿しました。「(LGBTは)生産性がない」といった「差別的な表現」が含まれていたことから、この文章は大きな批判を呼び、杉田議員の辞職を求める抗議デモなども行われましたが、『新潮45』はさらに9月、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題した特別企画を掲載。今度は、小川榮太郎氏(文芸評論家)の文章中の「LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だ」「痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。彼らの触る権利を社会は保障すべきではないのか」といった表現が批判を呼びました。

 こうした一連の流れを受け、『新潮45』は休刊することとなりましたが、ネットやSNSでは、杉田議員や小川氏、『新潮45』を擁護する意見も少なからず見受けられました。

 同様に、同性パートナーシップ証明の広がりや同性婚訴訟などに対するネガティブな反応もしばしば目にします。「保守的な非当事者」の意見は、「同性愛は自然に反している」「同性パートナーや同性婚を認めると、少子化につながる/伝統的な家族制度が破壊される/犯罪が増える」といった、とっくの昔にその根拠のなさや論理的な破綻が明らかになっているものがほとんどであり、(いまだにそんな言説を「正しい」と信じ込んでいる人たちが一定数いることにがっかりしつつも)あらためて取り上げる気にすらならないのですが、近年、「政治家やメディア等の差別的な発言・表現に異議を唱える人」「セクシュアルマイノリティのパレードや権利獲得を求める活動、同性パートナーシップ証明制度/同性婚を求める活動などに携わっている人」を「LGBT活動家」とひとまとめにし、批判・非難する当事者の発言を見かけることが増えました。

 そうした「アンチLGBT活動家」の中には、セクシュアルマイノリティに好意的な施策を行う自治体や企業などに抗議する人たちもいるようです。セクシュアルマイノリティの差別解消・権利拡大などを求める動きに反発する当事者も昔からいましたが、SNSの普及によって、「アンチ」同士がより共感し合い、連帯しやすくなったのかもしれません。