やがて街づくりを学ぶ大学生たちも参加して「芝園かけはしプロジェクト」が発足する。彼らが最初にやったのが、団地の共用スペースにある木製のテーブルの改修というのが面白い。薄汚いヘイトの文句が落書きされたテーブルをペンキで塗り直し、住民たちの手形で埋め尽くした。彼らがアートの力で団地の風景を変えて行くプロセスは感動的だ。2018年度には自治会役員に中国人住民が選出されるまでになったという。外国人との共生を考えるうえで、芝園団地の取り組みには学ぶべき点が多い。

高齢化や多文化共生など難題山積み
本当に「日本すごい」と言えるのか

 ところが残念なことに、こうした取り組みに水をさすメディアもある。

 ある情報バラエティ番組(本では実名)は、「町に中国人が急増!恐怖の乱闘騒ぎとゴミ問題」というおどろおどろしいタイトルで、川口市で急増する中国人を特集した。取材班は二度にわたり芝園団地を取材し、ごみ問題について自治会関係者に話を聞いたようだが、「外国人が捨てたというよりも、外部から捨てに来る人がいる」と説明したにもかかわらず、その部分はカットされ、ただただ「街を暴力とごみで塗り替える中国人」という印象をあおる内容でまとめられてしまったという。「芝園かけはしプロジェクト」は放送の3年以上も前に始まっていたにもかかわらず、一顧だにされなかった。

 このように、世間には「オルレアンのうわさ」に積極的に加担する人々もいる。愛知県豊田市の保見団地は、ブラジル人住民が多いことで知られるが、ここには毎朝ゴミ捨て場をきれいに掃除しているブラジル人がいる。汚れているとブラジル人住民のせいにされるからだという。ところがそれを知っていて、わざわざ他の地域からごみを不法投棄しに来る日本人がいるというから呆れる。

 いま団地で起きていることは、これから多くの人が直面する課題でもある。団地には日本の未来があるのだ。だとするならば、そこで起きている現実から目を背けるべきではない。ネットをみれば「日本すごい」と礼賛する人々で溢れている。だが、本当に「日本すごい」と言えるのは、いま団地で起きている高齢化や多文化共生といった難題を解決できた時ではないだろうか。

(HONZ 首藤淳哉)