本当の学校改革は、情報技術への投資から始まる

 ミネルバ大学はオンライン大学だという誤解が日本ではまだまだあるようだが、実際には、学生が世界の7つの都市で、プロジェクト学習を積み重ねながら、自分の進みたいキャリアを構築するために再設計された大学だ。従来の大学では、1人の教授がいる場所に数百人の学生が学びに来るので、1つの場所に高額な施設を用意しなければいけないが、ミネルバ大学では学生が滞在している場所に教授が教えに来るような仕組みをオンライン技術によって実現することで、学校経営のコストを大幅に圧縮している。つまり情報技術に投資したからこそ、学生たちは異文化に触れ、豊かな国際経験を積むことができるのだ

 ミネルバ大学のような大学はゼロから創ったから可能だったのだ、という大学経営者もいる。しかし、数十億円かけて新たな土地と豪華な図書館を立てる計画があるなら、同じ金額で情報技術に投資を行う意思決定はそんなに難しいことだろうか。あるいは大学は、すでに施設があるからそれを利用しつづけなければいけない、という固定観念にでも縛られているのだろうか……。

 日本では、2020年の大学入試改革は大改革だと騒がれたが、結局は紙ベースの一発試験の出題傾向が変わるだけで落ち着きそうだ。もう、こうしたから騒ぎで盛り上がるのは止めて、現実に目を向けるべきだ。日本が数年にわたって入試制度にすら情報技術を導入できずに立ち止まっている間にも、世界ははるか先に進んでいる。