生涯続くキャリア支援をどう実現するか――ポイント[3]出口戦略
「一生涯続く、キャリア支援を提供する」
この文句自体は、海外の名門大学ならそれほど珍しいものでもない。卒業生は図書館や大学に来る求人情報を検索できる、卒業生ネットワークを通じて転職機会などのキャリア・チェンジを模索できる、エグゼクティブ向けのプログラムを割引価格で受講できる……などが主な内容だ。
ミネルバ大学でも、そういったサービスは享受できる。しかし、大きく異なるのはミネルバ大学のキャリア構築支援が、単なる「就職活動支援」ではなく、「社会に出てどのようなインパクトを残すか」という視点に立って、学生のコーチング、信用付与、インターンプログラムの紹介を行っている点だ。
コーチングは大学1年生のときから始まり、学生のキャリア志向に基づき、社会に出るまでにどのような経験を、どこでどのようにするべきかメンタリングを受けられる。豊富な課外活動プロジェクトだけでなく、自ら起業や社会プロジェクトを立ち上げる学生もいる。必要な条件を満たせば、教授の推薦を得たりすることも可能だ。
また、キャリア構築支援チームは、定期的に学外の企業・大学(院)・NPOなどで構成される雇用者アドバイザーグループとの対話の場を設定し、社会のリーダーとして期待される職業・社会活動経験について助言を受け入れている。ミネルバ大学における出口の支援、出てからのキャリア支援は在学中から始まっているのだ。そして、卒業生は引き続き、こうしたサービスを必要に応じて利用することができる。卒業生としての活動がミネルバ大学のオウンドメディアを通じて、学校に注目している外部の組織に注目されることも卒業生、大学の双方にとって有益だ。
こうしたキャリア支援の観点からすると、学生の活動記録がデータとして残っていることのメリットは大きい。ミネルバ大学が在学生にリンクトインのアカウントを持つことを奨励していることも、卒業後のフォローアップを容易にしている。スタッフが変わっても、その学生の特徴やキャリア志向、活動内容から適切な支援を提供するヒントが得られるからだ。
卒業後10年経ったら紙の成績表しか出せない大学と、社会と常につながり、リーダーに求められるスキルと経験について情報が更新され、自分の特性に合ったキャリア・アドバイスを受けられる大学。もしあなたが子どもを入学させるなら、きっと後者を選ぶであろう。