オンラインプラットフォームを何のために使うのか――ポイント[2]在学中の授業設計

 入学後は独自のオンライン学習プラットフォームを利用し、教科の枠を超えた教員チームが各学生の科目横断的な思考・コミュニケーション技能の習熟度に合わせて授業内容を微調整することが可能だ。既存の大学で、思考力やコミュニケーション力を図るルーブリック(学生の習熟度を達成度別に評価する方法)を毎週、教員が事実に基づく情報を参照しながら、次の授業設計に反映することは不可能だろう。授業中のファシリテーション機能はわかりやすく、注目されやすいが、より重要なのは授業の結果を授業の効果分析、適切な授業設計に反映して、より質の高い教育を提供するためにオンラインプラットフォームが活用されていることだ。

「入試」もキャンパスもない大学を<br />なぜいま日本が真似すべきなのか<br />――大学改革のための3つのポイント図2 ミネルバ大学におけるオンライン教育プラットフォームの仕組み

 トップアスリートの世界に置き換えて考えてみればわかりやすいかもしれない。ビデオやコンピューターを持っていても、それをどう使うか理解できていないチームやアスリートよりも、ラグビーの日本代表のように相手チームのデータを分析し、対策を練ったチームであれば強豪に対する勝機を見出せる。

 学生の情報は、独自のオンライン学習プラットフォームを通じた習熟度把握だけでなく、学生のキャリア指向やプロジェクト学習でのパフォーマンス、インターン先からのフィードバックなどでも活用されている。キャリア構築支援担当者は学生の具体的な活動(授業、プロジェクト学習、課外活動データベース)を確認し、毎日接していない学生であっても、その特徴を把握できる。学生にコンタクトしたい企業などからのリクルーターに対して適切な学校内選考を経て、紹介できる仕組みになっている。このようなキャリア構築支援とアカデミックチームの情報共有の仕組みはミネルバ大学よりもはるかに高額な学費を要求するMBAプログラムでも実現されているケースは稀だ。