10~20年後に日本の労働人口の49%の仕事がAIやロボット等で置き換えられるというレポートが2015年12月、野村総研とオックスフォード大学の共同研究によって発表され、大きな衝撃を与えたことをご記憶の方も多いだろう。その研究リーダーである野村総合研究所の未来創発センター長の桑津浩太郎氏と、本連載『組織の病気』筆者である秋山進氏が2回に分けてAIと人間の今、そして未来を語り合う。前編(「仕事の49%がなくなる」衝撃レポから3年、AIは本当に仕事を奪ったか)に続き、後編ではAIを使う意思決定が進まないのはなぜか、IoTに人間が監視される監視社会に私たち人間がどう対応すべきか、解説してもらった。
日本でAIやIoT活用が進まないのは
「50代以上」が意思決定しているから
秋山 前編では、AIやIoTをもっと活用していくためには、社会のルールを変更すべきとのお話がありましたが、重要なことは社会が意思決定できるかということですね。
野村総合研究所マネジメントコンサルティングコンサルティング事業副本部長 未来創発センター長 研究理事
京都大学工学部数理工学科卒業。1986年にNRI入社。野村総合研究所 情報システムコンサルティング部、関西支社、ICT・メディア産業コンサルティング部長を経て、2017年研究理事に就任。ICT、特に通信分野の事業、技術、マーケティング戦略と関連するM&A・パートナリング等を専門とし、ICT分野に関連する書籍、論文を多数執筆、近著に『2030年のIoT』(東洋経済新報社)
桑津 行政サービスがスマホ1つで完結するような「エストニアの電子政府」と同じことをなぜ日本ができないかという問題と同じで、意思決定ができないことによって、日本が世界に後れをとっていることはたくさんあります。
秋山 そもそも日本では組織でなかなか大きな意思決定ができません。忖度マシーンのミドルが意思決定の邪魔をしたり、無駄な会議ばかりだったりと阻害要因がたくさんあります。働き方改革とAIの導入などをどう組み合わせていくかということも、日本の会社の効率化には大事なことですね。それこそHRテックの導入で、人材をもっと上手に使えるようになるのでは、と思うのですが。
桑津 HRテックを活用し、仕事のパターンやチームメンバー構成のデータをためていくと、社員同士の相性やそれぞれの経験、技術、体力、対人関係、スキルを見ながら、最適なチームを組めるようになります。それで、新しい事業はプロジェクトごとに、離合集散してチームを組んで行うと、もっと機動的な意思決定ができて、新規事業も始めやすくなるでしょうね。
秋山 社員のスキルの見える化と組み合わせ最適化は成果が出そうですね。今後はアクティビティーのログ解析や文章の構造解析なども入ってきて、さらに精緻化されそうです。とはいえ、このようなデータはセンシティブなものですから、自分が丸裸にされたような気分になるかもしれません。