ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
インキュベーションの虚と実

なぜスゴそうな人も大ゴケするのか?
テーマで間違うスタートアップ

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第5回】 2012年6月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
2
nextpage

 ユニークで分類できないものの最近の分かりやすい一例にInstacanvasというスタートアップがある。同社はフォト・アーティストによるInstagramの写真を、木枠のキャンバス地に貼って売る事業を始めている。10人程に招待を送ったら3日で4000件を超えるサインアップがあり、あっという間に売上が立ったスタートアップだ。他にも、「えっそんな、まさか」というスタートアップがいろいろとある。

出所:NetService Ventures Group/Bullpen Capital

 本連載第3回で登場したリチャード・メルモン氏のBullpen Capitalは、投資でフォーカスする分野として、日本でも人気のモバイル&ソーシャル(Mobile & Social Personalized)やソーシャルゲーム(Social Games & Real Money)、前出の調査で米国首位の広告(Advertising Tech)に加え、メディア(Reinvent Media)、エンタープライズ(Reinvent Enterprise)、ビッグデータ(Big Data)を掲げている。

 Bullpenの投資先で代表的な2社は、Salesforce.comに買収されたエンタープライズ分野のAssistly(ソーシャルメディア活用を助ける法人用ツール)、メモリー大手Sandiskに買収されたビッグデータ分野のFlashsoft(USB用フラッシュメモリーのパフォーマンスを上げるソフト)だ。日本のスーパーエンジェルでは、こういったテーマを掲げるスタートアップへの投資は少ない。

 Bullpenのパートナーを知るある日本人は、「Bullpenの人間はビッグ・アイデアへの探求心がすごい」と言う。リチャード・メルモン氏が言う突然変異的なアイデアを、彼らは求めているのだ。

 本連載第2回で紹介した500 Startupsは、ネットを活用する分野に集中し、Eコマース、モバイル/タブレット、ファイナンス/決済、ファミリー/教育、ヘルスケア/フード、中小企業向け、インターナショナル/言語にフォーカスして投資している。500 Startupsは、日本で人気のあるモバイル/タブレット以外の分野にも力を入れている。代表のデイブ・マクルーアは、「日本でもEコマースやファミリー/教育などの分野をもっと積極的にやればいいのに」とコメントしている。

 500ファミリーの代表的な2社は、Facebookマーケティングの法人向けツールとサービスのWildfire、ウェブサービス等に電話機能を付加するツールのTwilioが挙げられる。Bullpenと同様に、エンタープライズとテクノロジーのスタートアップだ。こういったテーマは、日本のスタートアップでは少数派だ。

 また、500 Startupsは、ファイナンス、エンタープライズ、通信、コミュニケーションほか、皆が注目する人気分野(彼らの言葉を借りればセクシーな分野)以外のテーマを探求する「unSEXY conference」なるイベントも企画している。

 これらはごく一部の例だが、シリコンバレーではスタートアップは様々なテーマに挑んでいる。しかも、大きく化ける可能性のあるものや独創的でユニークなものへの探求心は並大抵ではない。

次のページ>> 日本はこじんまり
previous page
2
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

⇒バックナンバー一覧