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「企業活動に伴うリスクをなくそうとしても無駄である。現在の資源を未来の期待に投入することには、必然的にリスクが伴う」(『マネジメント』)
複雑な世界にあって、見えない未来に向けて、ヒトとモノとカネを投入する。そして、投入したものをはるかに超えるものを得る。それが企業の成長であり、社会の繁栄である。そこにリスクが伴うのは当然である。わかりきったものからは、わかりきったものしか手に入れられない。
ドラッカーが気にするのは、この当然のことに対する無知や無理解ではない。それ以前の問題として、頭もよく知識も豊かな人たちが、リスクについて持っている考え方である。リスク抜きを是とするメンタリティである。
それは世界からリスクを取り除くことはできるし、取り除かなければならないとする考えである。
そうではなく、より大きなリスクを負えるようにすることが必要なのである。
たとえば、毎年数百億円を研究開発につぎ込めるようになることが肝心なのである。
経済活動において最大のリスクは、リスクを冒さないことである。そしてそれ以上に、リスクを冒せなくなることである。
「リスクの最小化という言葉には、リスクを冒したり、リスクをつくりだすことを非難する響きがある。つまるところ、企業という存在そのものに対する非難の響きがある」(『マネジメント』)