日本人の「表敬訪問」が敬遠される理由
想像してみてほしい。皆さんの職場に観光気分の外国人が訪れて、プレゼンテーションを寝ぼけまなこで聞き、最後の質疑応答では沈黙。会社のロゴの前で写真を撮り、満足して帰っていく姿を。加えて、通訳を介するコミュニケーションが必要で、会話の速度は通常の二分の一。今後に向けたアクションステップを問われるとダンマリになり、「Keep in touch(連絡を取り合いましょう)」で終わってしまう。そして実際に連絡が取られることは2度とない――。
こんなことが、エストニアのスタートアップに降り掛かっているのだ。それも、毎日のように。
エストニアのスタートアップで働く人々は、きわめてオープンマインドだ。事実、1年前は日本人に無条件で会ってくれる人も多かった。その背景として挙げられるのは、彼らが人口約130万人のエストニアの市場をあくまでもテストマーケットとしか捉えておらず、グローバル展開に貪欲である点だろう。それゆえ、海外からの訪問客には手厚く対応するし、日本人であってもなくても、会おうと言うとすぐに会ってくれたのだ。
つまり、彼らが訪問客と会う理由は、その先にビジネスの機会を見出しているからに過ぎない。ただでさえ労働力が不足している国である。観光ガイドをしているほど、彼らに時間の余裕などない。家族を大切にする分、残業は滅多にしないエストニア人にとっては尚更だ。
「視察」という形だけの訪問が繰り返され、何もビジネスが生み出されなかった結果、日本企業に対する不信感が高まっていくのは自明の理だろう。
海外からの視察を受け入れる政府機関・e-Estonia Briefing Centerも、観光客気分の日本人を相手にしている時間は本来はない。日本企業にありがちな「とりあえず会いましょう」的な表敬訪問ほど、迷惑なものはないのだ。
では、日本企業がエストニアを訪れる際、どのような点に留意すればよいのか。