入試不正や食材偽装より
大きな被害を生んだ“物価偽装”
このところ、官公庁や大学の「不正」が関心を集め続けており、長期に渡る追及が続いている。ちょうど、東洋英和女学院の元院長による大胆すぎる研究不正が話題となったばかりだ。元院長がその分野の「ビッグネーム」であったにもかかわらず、学院は徹底した調査を行い、研究不正の事実を明らかにした。そして、極めて厳正な処分を行った。
2018年に発覚した東京医大の入試不正では、現在、不利な扱いを受けた受験生たちに対する補償交渉が行われている。
不正問題があるのは、煮ても焼いても食えそうにない学問や大学だけではない。2013年には、有名ホテルやテーマパークで、地鶏という名のブロイラーや、ビーフステーキという名の成型肉による食材偽装が話題になった
いずれの不正事件でも、関与した組織や当事者は、有形無形の多大な代償を支払わなければならなかった。組織に対する社会の期待や、事件の影響を考えれば、当然のことであろう。
しかし対照的なのは、2013年に行われた厚労省の“物価偽装”だ。厚労省は独自の物価指数「生活扶助相当CPI」を考案し、生活保護世帯に関しては物価下落が見られたとし、これを根拠として生活保護基準を引き下げた。
2013年、“物価偽装”に最初に気づいた白井康彦氏(当時、中日新聞生活部編集委員)は、2014年、生活保護ケースワーカーを主対象とする雑誌『公的扶助研究』で、次のように述べている。
「昨年、食品の偽装表示が大問題になった。自分は『厚生労働省はもっともっと悪いことをした』と叫びたい」