復興需要が期待されるセメント業界。首位メーカーである太平洋セメントは今後数年間、どのような展望を描くのか。4月に就任した福田修二社長に聞いた。
──6年ぶりに国内のセメント需要が増えている。復興需要はどのくらいと読むか。
手堅く見て200万トン程度上乗せされ、数年は4300万トン前後で推移するだろう。しかし手放しで喜んではいない。特需が終わったときに、グループの経営基盤が弱いままでは立ち行かない。
リーマンショック以降、3工場を閉鎖し人員も削減するなど大手術を行った。160億円の合理化に成功し、2012年3月期の純利益は3期ぶりに黒字転換した。
しかし、まだ足りない。長引く建設不況の影響で、いまだ有利子負債が5100億円、ネットD/Eレシオは2.6倍もある。これが当社の現実だ。
──どのように財務改善するか。
なにせ総資産1兆円に対する利益が少ない。資産が多過ぎるのか、はたまた利益が少ないのか──、まずは固定資産の売却を進める。それから360社もある連結子会社を、重複を合併するなどして早急に300社以下にする。
──利益はどう生み出すのか。
コスト削減は継続するとともに、粘り強く値上げ交渉をしていく。11年度は1トン当たり1000円を打ち出し、12億円の増収効果があった。もちろんまだ満額回答ではないので、今年も続けていく。
──値上げには顧客である生コンクリート会社の理解が欠かせない。
生コン会社の状況は、地域によって全く違う。うまく集約化が進んでいる地域とそうでない地域、協同組合が機能している地域と崩壊している地域とがある。適正価格で取引できるよう、個々に合わせた戦略を立てていく。当社系列の会社は集約を促していくが、系列外をどうするか難しいところだ。