大阪のセメント・生コン業界は、長年、販売単価と収益の低迷に喘いできた。藤成商事の経営破綻が地元を揺さぶる(写真と本文は関係ありません)

 大阪府の建設業界に激震が広がっている。12月14日までのわずか2週間で、府内を中心にセメント・生コン業者が15社も経営破綻したからだ。地元では、夜逃げ業者の社名まで飛び交い、大きな騒ぎとなっている。

 きっかけは、セメント・生コン卸の地場大手として知られる藤成商事(大阪市北区)が、11月30日に事業停止に追い込まれたこと。

 同社は現在、自己破産申請の準備に入っているが、1998年に東京進出を果たし、生コン業者のほかゼネコンや建材商社なども営業先として開拓を進めるなど、拡大路線をひた走っていた。

 2011年3月期の売上高は約193億円に上り、最近まで業界関係者を集めて豪勢なゴルフコンペを開催するほどだった。

 同社の破綻によって、生コンを製造するグループ3社をはじめ、取引先11社が年を越すことなく次々と経営破綻。地場の大手だけに影響力が大きかったこともあるが、じつはその舞台裏で、同社と取引先との不透明な手形操作の疑惑が浮上しているのだ。

 もともとこの業界では、一方が取引先にセメントを売って相手から生コンを買うという売買実態とともに、双方で手形を振り出し合うという習慣があった。それと並行するかたちで別の手口も利用されたというのだ。

 帝国データバンク大阪支社の和家浩紀氏は、「藤成商事と親密取引先は、融通手形を振り出し合うことで資金不足を解消していた疑いがある。同社の手形割引残高の推移は、事業規模に対してあまりにも多過ぎるし、売上高もこの建設不況下ではありえない増え方だ」と指摘する。

 現に11年3月期の同社の手形割引残高は39億0300万円と、過去6年で2倍以上にふくれ上がった。一方で、売上高は1.7倍にも増大している。

 手形割引のために銀行取引を続けるには、さらなる売り上げ拡大が前提だが、それも限界だったようだ。

「昨年以降、取引先の破産による大口不良債権の発生、さらに得意先の中小生コンメーカーからの売掛金回収の滞留も重なり資金繰りが悪化していた」(和家氏)ためだ。

 また、ある業界関係者は「銀行から借り入れようにも担保余力がなくなっていた」と解説する。

 大阪府内の建設業者は、長引く公共工事の削減とダンピング合戦で疲弊を続けた。なかでも、業界ピラミッドの末端に位置するセメント・生コン業者へのダメージは著しい。

 今回の藤成商事の破綻を機に、地元では「零細業者のさらなる連鎖破綻は避けられない」(生コン業者)と、ドミノ倒しへの危機感が広がる。すでに、破綻が懸念される業者として十数社の社名までささやかれている。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)

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