どのように部下をまとめ、導けばよいのか、「リーダーとしての仕事のやり方」を教えてくれる会社はほとんどない。そのため、多くの会社で「上司はいるがリーダーがいない」という奇妙な状態が起こっている。
リーダーにとっていちばん大切なことは何か。国連、米軍、ディズニー、アメックスなどの一流組織でリーダーシップを教え、TED動画が4000万回以上(史上3位)再生されているコンサルタント、サイモン・シネックによると、リーダーの本質は「人を奮い立たせること」だと指摘する。
シネックの思想を50のシンプルな言葉と美しいイラストにまとめた新刊『「一緒にいたい」と思われるリーダーになる。』の刊行を記念し、本書を監訳したコーチ・エィ社長の鈴木義幸氏に、この春昇進したリーダーが気を付けておくべきことを聞いた。
なぜ昇進直後から暴走する
管理職が後を絶たないのか
管理職になると、たいていの人が職場のリーダーとして頑張ろう!と、使命感に燃えるものです。しかし、昇進したからといって、自動的にリーダーとしての振る舞いが身につくわけではありません。リーダーシップとは、「天賦の才」といったものではなく、誰もが開発できる領域です。ただし、時間はかかります。むしろ、リーダーシップは「開発し続けるもの」と言えるでしょう。
リーダーとは、半年、あるいは1年、それ以上の長い時間をかけて、だんだんリーダーになっていくんだという心構えを持ち、最初は焦らないことが重要です。
「最初が肝心だから初日からリーダーらしく振舞わないといけない」と思うとプレッシャーになります。そうなると、本来の自分らしさを失い、固くなってしまいます。「リーダーとはこうあるべきだ」という思い込みから自由になることです。
「今うまくいっていないな」と思っている管理職の方の多くは、今までの自分の上司像や本などから学んで、「リーダーはこうふるまわないといけない」と思い込んでいることが多いのではないでしょうか。
このような思い込みがあると、うまくいっていなくても、自分の形を押し通そうとして、残念な結果に終わります。
以前、はじめて読んだリーダーシップ本で「人の話を聞くことが必要だ」という部分が印象に残り、リーダー就任初日に「これから毎週、みんなと面談をします!」と宣言した人がいました。でも、部下たちにはその背景や理由が伝わらず、「この人と1対1で話すのは苦痛だ」と嫌厭されてしまったそうです。
「部下への質問」で
自分らしさを取り戻す
このような思い込みから自由になるためには、ところどころで部下に質問をしてみることをお勧めします。「会議の進め方はどうか?」「知りたい情報はあるか?」というように、都度都度、気軽に聞いてみるのです。
私は、リーダーを潜水艦にとらえて説明することがあります。潜水艦は海底を航行しますから、基本的に目視では進めない。そのためにソナーシステムがあって、音波を出して跳ね返りを拾うことで、周囲の状況を判断します。このソナーシステムのように、部下に質問をしてどう思っているのかを聞くことで、自分の状態や組織の状態を認識するのです。
部下に質問をせずに自分のやり方を押し通しているリーダーは、ソナーシステムを搭載していない潜水艦のようなものです。岩にガンガンぶつかって傷ついているのに、俺のやり方はこうだと言って進路を変えない。そうすると岩は崩れるわ潜水艦もボロボロになるわで、部下も自分も大変なことになります。
部下の言うことを100%叶える必要はもちろんありません。そうすると立ち行かなくなってしまいますからね。ですが、部下が何を考えているかということをある程度でも知ることで、軌道修正することはできるわけです。