池袋暴走事故と丸山議員の暴言に共通して見える「ネット時代の病理」
最近、マスメディアを賑わせた池袋での高齢者暴走事故と、丸山穂高議員の北方領土問題に関する暴言は、共通する問題点があるように見える(写真はイメージです) Photo:PIXTA

池袋の高齢者暴走事故と
丸山穂高議員の暴言に共通する“悪い癖”

 最近マスメディアを賑わせた報道といえば、池袋での高齢者暴走事故と丸山穂高議員の北方領土問題に関する暴言があります。この2つはまったく性質が異なる事象ですが、前者をめぐる世論の反応、そして後者における議員本人の対応を見ると、共通する問題点があるように感じます。ネット特有の“悪い癖”が如実に現れているのです。

 まず、池袋での高齢者暴走事故を考えてみましょう。87歳の高齢者の暴走運転で母子2人が死亡するという、痛ましい事故に対するネット上の反応を見ていると、ネットに特有の典型的な現象が起きています。

 ネットが普及する前は情報自体の希少性が高かったのですが、ネットの普及により情報の量が過剰になったことで、逆に情報を享受する側である人のアテンション(注意、関心)の希少性が高まりました。情報やコンテンツを提供する企業や個人にとって、いかにユーザのアテンションを引きつけるかが重要になったのです。それがリアルの世界にも波及し、今の経済や社会は「アテンションエコノミー」になったといわれています。

 そして、アナログの時代から常に、良い情報よりも悪い情報の方が受け手に引き起こす感情の起伏の幅が大きいことから、人の興味を引きやすく拡散しやすい傾向はあったのですが、アテンションエコノミーという行動原理が支配的になる中で、ネット上では妙な進化が起きてしまいました。

 怒りについて分析している心理学者によると、怒りには多くの種類があるのですが、その中に「モラルアウトレージ」というものがあります。これは単なる怒りとは異なり、怒りの対象となる事象が自分の信じる道徳や常識(モラル)の一線を超えているため、その事象を引き起こした人を懲らしめたいとまで考えてしまう、激しい怒りです。適切な日本語訳が見つかりませんが、あえて言えば“憤り”“義憤”が意味的に近いでしょうか。

 池袋の暴走事故は、87歳とかなりの高齢で日常生活でも杖を使っていたドライバーが運転ミスをして事故が起きたという点で、このニュースをネット上で見た多くの人は、まさにモラルアウトレージを感じたはずです。