2017年も連日のように政治家の失言や暴言が相次いだ。しかし、過去を振り返れば、政治家とは思えないような失言は決して少なくない。今回は、木下厚著の『政治家失言放言大全 問題発言の戦後史』(勉誠出版)を参照し、政治家の無神経極まりない暴言を紹介する。(清談社 福田晃広)
「農民は筋肉労働で働くしか能がない」
歴史に残る政治家の大失言
“国会のヤジ将軍”との異名もあった、自民党の松田九郎衆院議員(当時)が、1989年(平成元年)7月20日、テレビ朝日で放送された『内田忠男モーニングショー』で、とんでもない発言をした。
この番組は「これからの農業をどうするか」をテーマに、自民党からは“農林族”の松田議員と佐藤隆元農水相が出席し、秋田や山形の農業従事者と対談するといった内容だった。そこで司会の内田が「農産物の自由化を求める外圧についてどう思うか」と、松田に質問したところ、農業従事者が大勢いることを挙げて、次のように述べた。
「これらの人口があぶれたらどうしますか。農民は筋肉労働で働くしか能がない。一朝一夕に機械が触れますか」
この発言の直後、テレビ朝日には抗議電話が殺到したという。その問題発言をした約20分後、女性司会者が「怒りの電話がかかっているので、ひと言」と話を振られると、松田はこう放言したのだ。
「怒りなんておかしい。農民は実際に技術的な習得もなければ、ソロバン勘定も事務的な処理もやったことがない。毎日が筋肉で働いているので、そういった人が減反や自由化で路頭に迷う」
これに対して、番組に出演していた秋田県の農業従事者が「そういう農民がいると思っているから、自民党農政はダメになる」と抗議すると、松田は「何を言ってるんだ君は」と一喝した。
この松田の暴言に、番組終了間際から正午までで抗議の電話が約200本に達したという。このような農民を侮辱する発言は、決して許されるべきものではないのは言うまでもない。