バイトに問題行動をSNSで拡散される職場、調査でわかった原因と防ぎ方多くの企業で、アルバイトの問題行動が動画系SNSを通じて拡散され、「バイトテロ」などと呼ばれて問題視されている。和定食チェーンの大戸屋も、従業員による不適切動画のアップを受け、研修のため休業に入った Photo:DOL

続発するアルバイトの「問題行動」
現場の状況は実際にどうなのか

 昨今、多くの企業で、アルバイトの問題行動が動画系SNSを通じて拡散され、一部メディアでは「バイトテロ」などと呼ばれ、議論が大きくなっている。過去の動画を掘り起こすムーブメントも続き、企業にとっては大きなリスクとして認知され、問題を起こした従業員への損害賠償請求を検討する企業も出てきている(ちなみに、話題の問題行動は、政治的意図を持つ暴力を伴う「テロリズム」とは全く異なる事象であり、いかにも煽情的な呼称である「バイトテロ」は本稿では用いない)。

 喧喧囂囂の議論が続いているが、「こうしたことは前からあったこと」「問題を起こすのは一部の従業員だけだ」など、ほとんどの意見が個人の経験と直感に基づいており、信憑性と発展性に欠ける。もう少し客観的なデータを参照し、この問題を解消するための前向きな議論をするべきだ。

 では、果たして従業員によるこうした「問題行動」「不正行動」は、どのくらいの頻度で起こっているのだろうか。小売・外食・運輸のアルバイト・パートとして働く従業員を対象とした実際の調査データを見てみよう。(パーソル総合研究所・中原淳「パート・アルバイト一般従業員調査 2016」/WEB定量調査/全体8141 サンプル)

 正確な頻度や違反内容はわからないというデータの限界はあるが、「よくある+ときどきある」計で10.8%、「たまにある」を含めると32%と、多くの職場でなんらかの規則違反が行われていることがわかる。いま表面化していない企業の職場の多くも潜在的リスクを抱えているといえ、これは話題になった企業だけの問題ではないことがわかる。

 上のデータから見て取れるもう1つのポイントは、不正などが「まったくない」職場も46.5%と半数近くあることだ。不正が起こる職場、起こらない職場でなにがその違いを生み出しているのだろうか。相次ぐ不正行為において、厳罰化や賠償請求は、あくまで「事後」の処方箋的な対策にすぎない。「事前」の対策としてなにができるのかがより重要だ。働き方やマネジメント状況など、他のデータとの分析を通じて見えてきたポイントは2つある。