「『春一番』のアルバム曲で森雪之丞さんの詞でくしゃみをしたのは覚えています」

石黒 女優や歌手とか別にして、日々暮らしてきて、積み重なってきた家族への思いなどはありますよね。それを、旦那さまとか娘さんとかに伝えたりとか、ありますか? 書かれた詞に込めた思いみたいなものを、旦那さまにとか娘さんにとか。

伊藤 はっきり感謝の言葉とか、出会ってよかったとかね、なかなか言えないじゃないですか。なので最近はなかなかないですねえ(笑)。お互い忙しいというのもありますし。

石黒 娘さんからとか、蘭さんからとか、メモして渡したりなんてのは……?

伊藤 あー、最近はないですねえ。小さい時はそういうのありましたよ。お互いに、そういう手紙も取ってあったりとか。

石黒 いいですねえ。ゆくゆく、そんなお手紙も詞へのきっかけとなったりしたら、46年間おそれながら同じ時代を生きてきた僕たちファンも、あたたかい気持ちになれると思います。

伊藤 そう思っていただけること、ありがたいです。

石黒 そして、またさらに曲のお話に戻りますが、キャンファン的には、今回の作詞家陣の中に、森雪之丞さん、阿木燿子さんのお名前を見つけたときには、おお、スタッフの方々もさすがわかってる! とアガリました。あ、エラそうにすみません(笑)。まずは、雪之丞さんについては、どのような流れで?

伊藤 先ほどお話ししたように、曲を募るコンペ状態だったので、まずは、AKBグループはじめいろいろなアーティストに曲を書かれてる丸谷マナブさんのメロがあって。スタッフのみなさんから、その曲の詞を、雪之丞さんにお願いしようという案が湧いてきて、ぜひぜひと! 

石黒 そうなんですね! 1976年春のアルバム「春一番」で、デビュー間もない森雪之丞さんが3曲詞を書かれてるんですが、情景描写が斬新で、僕が作詞家のセンスにしびれた最初でした。そして、「オムレツをつくりましょう」「恋の臨時ニュース」「PAPER PLANE LOVE」が全部、3人の中で、蘭さんがリードボーカル取る曲なんですよね。

伊藤 あ、たしかに、そうですね! 先にタイトルだけできたと情報がきて、「秘密」なっていまして、なんとなく、あー、これでできたなあ、って楽しみに待ってました。すると、意外というかああいう大人びた、艶めいた詞になっていて、いいなあって。

石黒 2008年に行われた「全キャン連大同窓会」フィルムライブの打ち上げで、ほんの一瞬だけ、雪之丞さんとお話しさせていただいたことがあるんですね。その時僕が「恋の臨時ニュース」で、蘭さんがくしゃみをするところがすごく好きなんですと大リスペクトを込めてお伝えしたら、「あ、あれ、ランにくしゃみさせたくて書いたんだよね」って超レアなネタを聞きまして! ご存じでした?

伊藤 そうなんですね! たしかに、くしゃみをしたのは覚えてますけど、させたかったっていうのは知らなかったですねえ~。作詞家の意図までは汲み取る余裕がなかったですね(笑)。

石黒 43年後に知る真実!(笑)。

(第3回に続く)

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伊藤 蘭(いとう・らん)
1973年、「キャンディーズ」のメンバーとして歌手デビュー。センターとなった5枚目のシングル「年下の男の子」が初のヒットとなってからは人気沸騰。「春一番」「やさしい悪魔」などヒット曲を続け、1977年7月、突然の解散宣言から、1978年4月に、後楽園球場で伝説となったファイナルライブを行うまでファンを熱狂させた。80年、映画『ヒポクラテスたち』(大森一樹監督・作)に主演し女優として芸能界に復帰。以降、夢の遊眠社作品をスタートとして、三谷幸喜作品『子供の事情』など数々の舞台に。テレビドラマでは、木曜ドラマ『DOCTORS 最強の名医』などに出演、映画『少年H』では夫である水谷豊との共演も果たした。2019年5月 歌手としてソロデビュー。

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