シェア9割のアーム抜きで半導体は作れない

 アームの設計図の強みは、低消費電力だ。この特徴が支持され、今ではスマホ向け半導体のシェアは約9割に達している。

 アップルのiPhoneに搭載されている半導体「A」シリーズや、米クアルコムの「スナップドラゴン」、韓国サムスン電子の「エクシノス」……。これら代表的なスマホ向け半導体はすべてアームの設計図を使っており、キリンも例外ではない。

 つまり、アームの設計図を使えなくなれば、そもそもハイシリコンはキリンが製造できなくなり、半導体の内製化というファーウェイの戦略の根幹が狂うのだ。

 アームに頼らない独自半導体を作ろうにも、低消費電力に長けたアームの特許に抵触しない形で高性能な半導体を設計することは容易ではない。

 加えて、独自半導体を設計できたとしても、アームが築き上げてきた巨大なエコシステムから抜けることへの弊害が生じる。

 スマホのOSやその上で動作する多彩なソフトウェアは、アームの設計図を使った半導体に対応するよう開発されてきた。開発を手助けするツールも充実しており、ソフトウェアの開発者たちはその環境に慣れきっている。

 既存の開発環境を捨て、ファーウェイの独自半導体の世界についてきてくれる企業や開発者がどれだけいるかは定かではない。

 また、ファーウェイの独自OSは、オープンソースであるアンドロイドをカスタマイズしたものとみられている。独自半導体へ移行したとしても、そもそもこの独自OSが動作するかが疑問になってくる。

 アームは、「米国政府によって定められた最新の規制を遵守するとともに、確実に遵守できるよう政府関連機関との話し合いを継続的に行っている」と取引停止について事実上認めた上で、「長期的なパートナーであるハイシリコン社との関係を重視しており、この件に関する迅速な解決を希望している」とコメントした。