配偶者の死後に届け出をすることで離婚と同じ状態になることから、マスコミの造語ながら『死後離婚』と呼ばれています。

 さて、A子さんは考え抜いた末に「姻族関係終了届」を提出することにしました。出してしまうと二度と「復縁」はできないことや、子どもは姻族との関係を継続しなければならないことなども十分考慮した上での決断です。A子さんのこれまでの献身を考えれば、夫の死後の残りの人生を自分のために自由に生きたいと思う気持ちを、誰も責めることはできないでしょう。

 ただ、もし夫がA子さんを少しでもいたわっていたら、もし夫の親族が義父の世話を少しでも手伝っていたら、状況は変わっていたかもしれません。

「死後離婚」したら
遺族年金はどうなる?

 もう一つ、A子さんが「死後離婚」を決意した理由があります。それは夫の遺族年金をそのまま受け取ることができるということ。

 女性が離婚に踏み切れない理由はさまざまですが、やはり経済的な問題を理由とする人は多いと思われます。

 遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。

 厚生年金に加入しているサラリーマンの夫が死亡した場合、死亡した当時、生計維持などの要件を満たした妻には、高校生以下の子等がいれば遺族基礎年金・遺族厚生年金の両方が、そのような子がない場合には遺族厚生年金のみが支給されます。ここでいう「生計維持」とは、生計を同じくしている妻(例えば、住民票が同じであるとか、住民票は違っても家計は同じであるなど)の前年の収入が850万円未満の状態をいいます。

 A子さんの夫は大学を卒業してから51歳で亡くなるまでの30年間、サラリーマンとして厚生年金に加入していました。夫の死亡当時、A子さんは専業主婦、子どもは大学生でしたので、受け取ることができる年金は遺族厚生年金のみです。