『ばけばけ』第57回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第57回(2025年12月16日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「カイダンモットホシイ」ヘブン、怪談を気に入る
ヘブン「墓すばらしい」
トキ「墓地ってさびしくてええですよね」
トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)とヘブン(トミー・バストウ)はお祓い(おはらい)をしてもらった大雄寺の住職(伊武雅刀)にこの寺にまつわる怪談を聞かせてもらうことになった。
住職は、怪談と関わりのある墓にふたりを連れていく。正木清一(日高由起刀)も通訳としてついていく。
住職が語ったのは『水飴を買う女』。
初代藩主、松平直政公の頃のお話。
当時、大雄寺の東側に小さな飴屋があった。ある夜更けに「1人の痩せこけたカゲロウのようなおなご」が、水飴をくださいと店を訪れた。店主は毎晩訪れてくる女性の顔色が日に日に悪くなっていくのが気になり、ある晩、そーっと後をつけてみたところ。彼女は墓の前でふっと消えた。
すると墓の下から突然おぎゃあおぎゃあと赤子の鳴き声が聞こえてくる。店主は寺の者たちを呼び、急いで墓を掘ると、そこには女性の亡骸(なきがら)と生まれたばかりの赤ん坊がいた。
妊娠中に亡くなった母親は幽霊となって、赤ん坊のために水飴を買いに店を訪れていたのだ。
怪談を真剣に聞き入るヘブンとトキ。
住職はお話がうまい。淡々としながら言葉が明瞭で粒立って、内容や雰囲気がよくわかる。
ヘブンは正木に通訳してもらって一部始終を理解し、めちゃくちゃ泣く。
住職は「お話した甲斐がございました」と安堵した様子。
「ハジメテカイダン」「スバラシイカイダン」とヘブンは感動し、「カイダンモットホシイ」と欲する。
残念ながら大雄寺に伝わる怪談は『水飴を売る女』だけだった。







