妻であるA子さんが「生前の夫は仕事人間だった」というくらいですから、夫の給与は同世代の人と比べると少し高めでした。サラリーマンとして勤めていた全期間の平均年収は約700万円。この場合、遺族厚生年金額はだいたい月額14万円程度になります。預金もそこそこありましたので、パート収入があれば独立して生活することは十分可能です。

妻が「死後離婚」を
選択する理由

「死後離婚を選択するにはそれなりの理由があるはず」と指摘する特定社会保険労務士の三戸礼子さん「死後離婚を選択するにはそれなりの理由があるはず」と指摘する特定社会保険労務士の三戸礼子さん

「死後離婚」を選択するには、それなりの理由、「火種」があるはずです。

・嫌いだった夫の親族とは関わりたくない
・夫と同じ墓に入るのは絶対にいや!
・夫の生前から舅・姑との仲が最悪だった
・とにかく、しがらみから自由になりたい!

 などなど。

 上記はいずれも夫婦間の問題ともいえるものです。お互いがお互いを思いやることで、何とか問題解決したいものですが…。

 さて、A子さんは、再婚をしなければ死ぬまで遺族年金を受け続けることができます。「死後離婚」後は自分の人生を自由に生きていくことでしょうが、いたわりの言葉すらかけなかった生前の夫のA子さんへの代償のごとく、死後の夫が遺族年金という形で経済面を支えているこの状況について、A子さんもさぞ複雑な気持ちでしょう。

 死後に償うより、生きているうちに、妻に、夫に、感謝の言葉をかけ、態度で示しましょう!

 今ならまだ「死後離婚」に至らずにすむかもしれません。

◎三戸礼子(みと・あやこ)
特定社会保険労務士。1965年生まれ、山口県出身。2007年1月社会保険労務士登録、2015年5月特定社会保険労務士付記。2000年1月に大槻経営労務管理事務所(https://www.otuki.info/)に入所以来、主に大規模事業所の担当者として給与計算や社会保険実務などの業務に従事。2017年10月からは労務コンサルティング事業部に所属。社会保険労務士の3号業務である相談業務に従事し、複数の事業所を担当。前職が大学の文部技官であったこともあり、実務セミナー講師や執筆活動にも注力。学生への指導や教授の学会資料の作成サポートなどで培った経験を活かし、「わかりやすい説明・伝わる内容」をモットーに活動。専門分野は「ハラスメント」。趣味は、読書と散歩。「晴歩雨読」の生活にあこがれている。