子育て中の親の悩みが幸せに変わる「29の言葉」を紹介した新刊『子どもが幸せになることば』が、発売直後に連続重版が決まり、大きな注目を集めています。著者であり、4人の子を持つ田中茂樹氏は、20年、5000回以上の面接を通して子育ての悩みに寄り添い続けた医師・臨床心理士。

本記事では、子どもにとっての「集中力」とはどのように鍛えられていくのかを、「毎週コナンを楽しみにしている小学生」を紹介しながらお伝えします。(構成:編集部/今野良介)

目を輝かせて『名探偵コナン』が始まるのを待つ息子

あるとき、私の講演のあとで、小学3年の息子さんのお母さんが質問されました。

「今日、家を出てくるときも、怒って出てきました。息子は夜6時から『名探偵コナン』を観るのをいつも楽しみにしているんですが、始まる15分も前からテレビをつけて正座して待ってるんです。何をしてるのかと聞くと、『気持ちの準備をしておくんだ』と言いました。あまりにバカバカしいと思ったので、どやしつけてきました。勉強は嫌いだし、宿題も何度も言われてから、いやいややる状態で。姿勢は悪いし、字も汚い。どうしたら、もっと集中できる子になるんでしょうか」

この質問を聞いて、頭に浮かんだのは、正座して、目を輝かせてコナンが始まるのを待つ息子さんの姿でした。そのワクワクする気分まで伝わってくる気がしました。たぶん、飲み物も準備して、トイレもすませて。番組を作っている人たちも、子どもにこんなに楽しみにしてもらったら、やりがいがあるでしょう。

この子には、「集中力」が、すでに十分にあると思います。

親は、「勉強や宿題をやること」に集中力を発揮してほしいので、「テレビを観る集中力」を評価することができません。でも、集中力というのは、まず自分の興味があることや、好きなものに対して向き合うことで成長していくものです。

まずは好きになり、他のことに気を取られず、だんだんと長い時間しっかり取り組めるようになっていく。やがて、そのために環境を整えたり、自分のコンディションを保つこともできるようになっていくでしょう。コナンに集中しているこの子は、「テレビを観るときの気持ちを整える」という段階まで進んできているとも言えます。

集中力や持久力は、はじめは何か1つのことで鍛えられると、やがて他のことに流用できるようになります。このような特性を「汎用性がある」といいます。スポーツをすることのメリットで、「集中力や粘り強さが鍛えられ、協調性が身につく」などと言われますよね。「あの人はスポーツで鍛えているから、へこたれない」のような言い方は、そういうことを指しています。

スポーツをずっとがんばってきたから、たとえば仕事における困難な局面でも、粘り強く取り組めるようになる。「粘り強さ」や「集中力」や「自信」などは「流用」されていくのです。

テレビ番組は、親から見たらバカバカしい、くだらないものかもしれません。子どもだって、やがてつまらないと感じるようになって、観なくなる日が来るかもしれない。カードゲームやスマホゲームやおもちゃなども、同じです。

 

 

でも、いまは、子どもが大好きになって、真剣にそれに向き合っている。そのときに、子どもは楽しむ力を育てている。自分を幸せにする力を育てている。何かを好きになる力が育っている。集中力や持久力が鍛えられている。

そう思って子どもを見ることができたら、「宿題もしないで、役に立たないもの観て……」とイライラすることはなくなる。なくならないまでも、少し、マシになるのではないでしょうか。