「子どもを思い通りに育てられない……」
「いつも、子どもにイライラしてしまう……」
「実は子どもが好きになれなくて、早く自立してほしい……」
「つい他の子と比較して、焦ってしまう……」

そんな、子育て中のお母さんお父さんの悩みが幸せに変わる「29の言葉」を集めた新刊『子どもが幸せになることば』が、発売前から注目を集めています。

著者は、共働きで4人の子を育てる医師・臨床心理士で、20年間、5000回以上の面接を通して子育ての悩みに寄り添い続けてきた田中茂樹氏。親が「つい、言ってしまいがちな小言」を「子どもを信じることば」に変換すると、親も子もラクになれるという、心理学に基づいた「言葉がけ」の育児書です。

この記事では、本書の根幹を支える「2種類の言葉」と、その影響について紹介していきます。(構成:編集部/今野良介)

「操作的な会話」と「交流的な会話」

「歯磨きしなさい!」とか「宿題はもうやったの?」のように、動作を指示したり、確認したりする声かけは「操作的な会話」と言われます。

一方で「今日は楽しかったなー!」とか「新しい自転車、乗りやすそうだね」のように、思いや考えを伝え合う声かけは「交流的な会話」といわれます。

たとえば、子どもの不登校の相談で私の元を訪れる親へのアドバイスは、ほぼ決まっています。

それは「交流的な会話をしましょう。そして、~しなさい。~するな。~はしたの? など、操作的な会話をできるだけやめてみましょう」ということです。

このようなアドバイスをする理由は、不登校などの相談に長年関わってきて、次のことに気がついたからです。

不登校、非行、摂食障害、「問題行動」……。表面に現れた子どもの問題はいろいろであっても、ほとんどの親に共通する特徴があるのです。

それは、家庭での子どもとのコミュニケーションが、「操作的な会話」で占められていて、「交流的な会話」がほとんどないということです。

そういう親といっしょにいる子どもは、家庭において、親からの指示や命令、確認の言葉をずっと受け続けている状態です。それでは家でも落ちつけないでしょうし、親も、子どもとの生活を楽しめないでしょう。

交流的な会話をこころがけ、操作的な会話を控える目的は、子どもが家でリラックスできるようにするためです。学校では勉強やスポーツをがんばる。でも、家ではリラックスする。それを徹底するのです。それだけで子どもの様子はかなり変わります。

大人と比べて子どもは、元気になる力、「元に戻る力」が強いのです。しつけもときには大事だということは、もちろん否定しません。しかし、不登校になるほど弱っている子どもの多くは、すっかり元気を奪われているのです。

なので、しつけの前に、まず何よりも元気になることが大事です。そのために、家ではとにかくリラックスする、そして元気を回復するということを第一の目標にするのです。

家でリラックスできないのって、つらいですよね……。

そのように説明すると、たいていの親は「そんな接し方でほんとうにいいのでしょうか?」と心配されます。そこで私は、そういう接し方をした場合に、子どもに起きてくる変化の具体例を、いくつかあらかじめ伝えておきます。それはちょうど、病気の診察でお薬を出すときに「この薬を飲んだら、こんな感じのことが起きますよ」と言っておくのと同じようなことです。

親がやさしく接するようになれば、つまり指示や命令を控えるようになれば、起きてくる変化は、どの子でもすごく似ているのです。

たとえば、テレビなどを観て、笑い声をたてるようになります。安心して観るようになるからです。「あの子、あんなにテレビで笑っていたかなあ」などと、親が気づくようになります。それまではおそらく、子どもは、テレビを観ていたら「いつまでテレビ観ているの?」とか「もう、そこらへんにしときなさい。そろそろ宿題したほうがいいよ!」とか言われてしまっていたはずです。

子どもは、テレビを観てはいるけれど、観ていないようなふりをしていたのでしょう。じーっと気配を殺して横目でテレビを観ている。おもしろくなさそうな感じにしておかないとダメなんですね。のん気に笑っていたら怒られてしまう。注意されるし、テレビを消されてしまうから。

親が注意することを控えると、それが変わってきます。安心してゲラゲラ笑うようになってきます。

「先生は、『子どもが』笑うようになるって言ってましたが、私自身も、よく笑うようになったみたいです。この前、夫から言われました。『君って、そんなに笑う人だったっけ? このごろCM観てもときどき笑ってるよ』って」と報告してくれた母親がいました。

「注意しない」と決めてしまうと、親もぐっとラクになります。いままでは「どうやって注意しようかな。あと何分我慢しようかな」と、ここで言うか、言うまいかみたいな感じで、いつも迷っていた。ずっと緊張していたんです。

でも、もう注意しなくていい、注意できないのだから、子どもが深夜0時まで観ようが1時まで観ようが「もういくらでもいいや!」と覚悟しているわけなので、親は一切迷わなくていい。そのメリットはすごく大きいわけです。

子どもとすごしている時間は本当に短いです。それなのに、ずっと小言を言ってすごしているとしたら、もったいないと思います。

小言を控えることを徹底するために、こんな手もあります。
子どもに、逆に注意してもらう、という方法です。