処分は、おそらく野村グループの収益に直接大きく影響するような内容にはならないのだろう。しかし、野村グループの関係者が今後の金融制度に関わる検討から除外されることになる可能性が大きいし、直接大きな処分をしにくい分だけ、見えにくいところで不利益を受ける可能性は大きいのではないだろうか。金融ビジネスが急速に変化している現状にあって、これは無視できない不利だ。

 金額等で見た時に大きくはないかもしれないが、今のタイミングでこの不始末は、野村グループにとって見かけ以上に「痛い」ものになるのではないだろうか。永井氏は、例えば自らの辞任のような「世間も金融庁も驚くくらいのカード」を早めに切るべきではなかったのだろうか。

「東証1部上場基準」の情報価値

 さて、大崎氏から漏れた情報、特に「東証1部」の上場基準に関する情報の価値はどのようなものだったのだろうか。

 この情報の価値は案外多岐にわたる。例えば以下の4点が考えられる。

(1)企業自体の価値評価に影響する情報としての価値
(2)株式のトレーディングや資産運用に利用できる価値
(3)この問題に関心を持つ企業に情報を提供できるサービス提供価値
(4)情報をコンサルティング、M&Aなどのビジネスに利用できる価値

 近い将来にそれほど大きな意味を持たなくなるかもしれないが、「東証1部上場企業」という看板は、取引の際の信用や資金の調達、人材の採用などに当たってある程度の影響力がある。つまり、企業の株式の価値を評価する資金運用者などにとっては、どういった基準の下にどの企業が東証1部に残ることができるかといった情報は具体的利益に結び付く、他人よりも早く知ることに価値のある情報なのだ。

 上記に加えて、東証1部は「TOPIX(東証株価指数)」という株価指数の構成銘柄とウェイトの基になっていて、この指数をベースにしたインデックスファンドの運用資金が多額に存在する。つまり、東証1部から除外されてTOPIXから脱落する企業の株式に対して、少なからぬ額の売りが発生する可能性がある。こうした情報を他の市場参加者よりも先に手に入れることができると、証券会社の自己勘定取引やヘッジファンド・高速取引業者などの市場参加者は市場にあって有利な立場を得られる可能性が大きい。

 もっとも、TOPIXに関連して彼らが利益を得る場合、損を負担するのはインデックス投信を保有する投資家をはじめとする一般の市場参加者だ。TOPIXをどう運営するかについては、今後、東証の見識と力量が問われる。