大手総合証券が厳しい経営を迫られる中、SBIホールディングスの業績が好調だ。今後の方針などについて北尾吉孝社長に聞いた。
──足元の経営状況は。
今年度9月中間期は過去最高益を更新しました。米中貿易戦争など、今年も不確定要素により波乱の相場になる可能性がありますが、当社の経営はこの先も基本的に順調だと思っています。
なぜかといえば、当社では株式市場への依存をできるだけ減らしながら、持続的な成長を追求しているからです。グループの連結税引き前利益に占めるSBI証券の構成比は42%で、全体の過半を証券以外の事業で稼いでいます。
また、SBI証券の内訳を見ても、株式市場に依存するリテール事業の顧客基盤は年々拡大していますが、今後はリテールの強さを生かし、ホールセールでも大手総合証券と勝負していく考えです。
──大手総合証券の状況をどう見ていますか。
総合証券はリテール事業のシェアを失う中、ホールセール事業をいかに存続させるかという問題に直面しています。かつての野村證券はリテール部門の営業部隊による販売力が圧倒的に強かったのですが、今や個人株式委託売買代金シェアは当社が36%。片や野村ホールディングスを含めた総合証券などは全社合計しても20%前後です。口座数でもトップの野村ホールディングスを抜くのは時間の問題でしょう。経営は時間の関数です。時間の経過とともに売上高や顧客数、市場シェアが増えないのであれば、それは時流に乗っていないということです。
──今後どういうグループ像を目指しているのですか。
当面の間は金融サービス事業とアセットマネジメント事業が両輪になると思います。バイオ事業の成長にはまだ時間がかかりますが、5年後には金融、アセマネ、バイオの税引き前利益の比率を5対3対2にする計画です。
当社がもはや証券会社の範疇に収まらないことを知ってもらい、1~2年内に時価総額で1兆円を達成したい。そのためにも、グループ会社の株式上場などにより、当社の潜在的な価値をどんどん顕在化していきます。
──今年7月で設立から20年となります。ご自身の後継者についてどう考えていますか。
SBI証券の経営は髙村(正人社長)に任せています。もちろん全部相談に来ますが、ほとんど判断は間違っていないので十分やっていけるでしょう。だから僕はグループ全体の戦略について常に考えています。今でも毎日4時間睡眠で、ゴルフもやらず、さまざまな分野の本を読んで勉強しています。誰よりも努力して、誰よりも強い情熱を持った人でなければ、当社のトップにはなれないでしょうね。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)