大手小売りチェーンによる都心部での小型食品スーパー出店が相次いでいる。売り場面積は40~60坪、営業時間は早朝~深夜で、コンビニエンスストアと競合しそうだ。異なるのは、生鮮など食品を主体とした品揃えである。

 「まいばすけっと」という店名で2006年から出店を始めたイオンは、採算が取れると判断し、今後3年間で300店を出店する。

 マルエツは今春から50坪の小型食品スーパーを出店する。同社は、これまで300坪以上の店は1都3県に、150坪の店は東京23区外縁部に、100坪の店はその内側にと、出店分けしてきた。

 新しい50坪の小型店は、JR山手線沿線や内側と、さらに都心を狙う。「生鮮を中心に3500~4000の品揃えで都心に住む人の食生活を充足したい」(高橋惠三・マルエツ社長)という。

 都心に近くなるほど、売り場面積が小さくなるのは、不動産コストによるところが大きい。

 都心立地になると店舗賃料は1ヵ月坪(3.3平方メートル)当たり2万~2万7000円になる。これが郊外では数千円という相場だ。郊外型サイズで都心に出店しようとすると採算が厳しくなる。また、都心では大型物件が少ないが、50坪であれば、コンビニや銀行店舗の居抜きを利用できる。

 今までは、都心部は食品スーパーの空白地帯で、高級スーパーくらいしかなかった。

 だが、人口は増えている。東京23区では、1996年以降13年連続で人口が増え続けている。まいばすけっとに買い物に来ていた女性は、「食材が豊富だし価格がコンビニより安く、働いている人には便利だと思う。私は週に2回は利用している」と言う。

 品揃えは食品スーパーの4分の1になるが、働く人のニーズや単身者の胃袋を満たすには十分で出店は加速しそうだ。

 ただし、小型店であるがゆえに売り上げ規模は小さい。イオンは300店で売上高1000億円を見込む。連結売上高5兆2307億円の同社にとって、いかにスピーディに成長させるかが課題といえよう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)