「ありましたよ、これだ。アレルゲンを見つけました」

 そこには積み上げられたまま放置された藁(わら)があり、びっしりとカビが生えていたという。患者の家は兼業農家。改築した母屋では、昔牛を飼っていたのだろう。藁は餌用に蓄えられていたものだった。

「アレルギーの治療で一番大事なのは原因を見つけることです。薬を処方するだけでなく、同時に環境対策をやらないといけません。特にアスペルギルスは非常に強力なアレルギーなので、薬だけでは治せません。どんどん悪化します。患者さんが普段過ごしている職場、もしくは居住環境を見て、『ここを改善してください』と教えてあげることが重要なんです。だから以前は、休日とかに時間を作り、重症患者さんの家まで出かけていったものです。まるで“根性の塊”みたいに(笑)。

 今は体力がないので、自分で行くことはしませんが、30代ぐらいまではほぼ行ってました」

 アレルギーでやっかいなのは、同じ環境で過ごしていても、発症する人としない人がいることだ。冒頭の患者も、家族中でたった1人の発症者であり、ほかの家族は、屋根裏がすっかりカビているにもかかわらず元気だった。

 本人にも家族にも思い当たることがないアレルゲンを特定できたのは、患者をなんとかして治したいと思う、谷口先生の熱意の賜物(たまもの)にほかならない。患者の生命を脅かす“凶器”は現場(患者の居宅)にあり。診察室で患者の話を聞いているだけでは解決できない「事件」だった。

「患者さんが先生」
その姿勢が真実に導いてくれる

 国立病院機構相模原病院のアレルギー科・呼吸器内科は、日本におけるアレルギー診療の最後の砦(とりで)だ。

 谷口先生は成人臨床と臨床研究のトップとして日夜、臨床と研究に取り組んできたが(ただし現在は、初診患者の受け付けは中止。セカンドオピニオン外来のみ受診可能)、やるせない憤りを覚えるのは、全国の医療機関から『重症のぜんそく』として紹介される患者の実に95%が誤診であるという事実だ。

 2017年2月20日掲載『重症ぜんそくの95%が誤診!治療で殺されないための患者学』の文中で先生は、次のように語っている。