野呂侑希Photo by Yuhei Iwamoto

注目のAI領域で、三菱電機から50億円を調達したスタートアップが現れた。初の大型調達でついた評価額は、なんと1000億円。これまでメディア露出に消極的で、その実態がベールに包まれていた燈(あかり)の野呂侑希CEOを直撃。連載『スタートアップ最前線』の本稿で、急成長を支える「東大エリートの囲い込み」と、野心的なビジョンの正体に迫る。(ダイヤモンド・オンライン編集委員 岩本有平)

三菱電機が評価額1000億円で50億円出資
創業5年で400人超のAIスタートアップ

 東京大学発のAIスタートアップ企業である燈(あかり)が29日、三菱電機から50億円の資金を調達したと発表した。燈は調達した資金でM&Aや、ロボットのような身体性を持つEmbodied(エンボディド)AIなどの開発を進める。同社のプレバリュエーション(調達前の評価額)は1000億円に達した。

 燈は2021年2月設立。東大の松尾・岩澤研究室(松尾研)がサポートする「松尾研発スタートアップ」の一社だ。創業期から建設業や製造業を中心にDX支援やAI活用のSaaSなどを展開。中小企業から大企業まで1000社以上の契約実績があり、大成建設や大東建託、長谷工コーポレーション、戸田建設といった大手ゼネコンの開発実績もある。

 25年10月には日本経済団体連合会(経団連)にも入会した。経団連の参加には「純資産額1億円以上」「3期以上連続して当期純損失を計上していない」といった条件があるが、同社は「創業期以来の黒字経営」をうたう。

 今回の調達を契機に、燈は三菱電機と事業面での連携を目指す。具体的には三菱電機のハードウエアやデータ、知見と、自社の得意とするAIやソフトウエアを組み合わせ、自動化・無人化工場の基盤開発を計画する。

 創業からわずか5年で評価額1000億円という、いわゆる「ユニコーン企業」の一歩手前の評価を受ける燈。社員数は26年1月時点で415人という規模に成長した。

 松尾研発スタートアップは、創業期に教授である松尾豊氏が個人出資するのが通例だ。燈はその点を明言していないが、事業に関わる外部資本の調達は今回が初めてとしている。

 加えて燈はDX関連の受託事業を中心としていたことから、メディア露出については限定的だった。そんな“隠れたユニコーン”の正体について、代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の野呂侑希氏に聞いた。

 これまで語られなかった野呂氏の原体験と、急成長を支える「したたかな戦略」について、次ページで明らかにする。