「ぜんそくの診断・治療はそれだけ難しいということです。うちに来る患者さんは、アスピリンぜんそくやアスペルギルス(重症のカビアレルギー)といった難治性ぜんそくの方ばかりではありませんよ。慢性気管支炎のような他の病気も併発しているのに見逃され、ぜんそくの治療だけやってきたために症状が悪化してしまったという方が本当に多い。

 多くの医師が、診断結果は1つと思い込んでいるのもよくないと思いますね。高齢者の場合、3つ4つの病気を持っているのは普通です。それらを的確に解析して、この方の症状の3割はこの病気、4割はぜんそく、といったように診断できなければ、適切な治療はできません」

 ぜんそくではない咳(せき)に、ぜんそくの薬を投与しても治らない。治療効果がなかなか現れない場合、本来なら、別の可能性も疑うべきところだがそうはせず、漫然と強力なステロイド剤の内服を大量かつ長期間続けた結果、副作用による重度の骨粗しょう症に陥り、手遅れの状態でやって来る患者は本当に大勢いるという。

 また逆に、肺高血圧症や心臓病など、他の重大な疾病を見逃され、悪化させてしまうケースもある。

 一般の呼吸科医には見つけられないのになぜ、谷口先生は、病気の正体を見抜くことができるのだろう。

「僕は、患者さんは先生だと思っています。でも医師の多くは違います。患者さんの訴えが自分の理論や考えに合わないとはねのけたり、否定したりしますよね。でもそれは医師としての力量が不足しているから解釈できないのであり、治せないのです。

 僕は患者さんの話に耳を傾け、理由をとことん追求します。それでも分からないときは、患者さんの家にも行ってみる。そうすることが難しい病気の治療にも研究にもつながり、今の自分があるのです」